PARACAGE 8th【ars】 (ページ21)

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266.兄妹喧嘩。ページ21

僅かな沈黙。

ニノくんは、短くなった煙草を深く吸ってフゥっと煙を吐き出した。

「もし、私がメンスト読んだとしても...」
「うん？」
「インタビューの相手が、その...雅紀くんの忘れられない人だなんて雅紀くんが言わない限り分からないもんね」
「.....それはそうだけど...」
「まぁ、雅紀くんに言われなくても分かっちゃったけど！」

誰かさんが言っちゃうから！って、ニノくんの肩をぐいっと押す。
彼は「だって仕方ないじゃん！」って、口を尖らせた。

「ねぇ...A、やっぱ怒ってた？」

でもすぐに、捨てられたわんこみたいに不安そうな表情。

「...そりゃね」
「.....ごめん」
「フフッ、うそうそ！怒ってないよ」
「はぁ？何だよ、お前！」

ニノくんがゴローンと後ろに倒れた。
頭を軽く打ったらしく、ゴンという鈍い音と「いてっ」と、小さな声。

「ねぇ、どうして雅紀くんがインタビューするんだろうね」

何気なく零れた疑問だった。
だって、彼はモデル業しかして来なかった人だ。
他にもモデル兼俳優の人とか、もっと有名なモデルさんはたくさん居る。

「あー...」

仰向けになってるニノくんが唸ったから彼を見ると、あからさまに目を逸らされた。

「...ニノくん、何か知ってるの？」
「あーいや...でもほら、もうオレこれ以上は何も言いたくないってゆーか...」
「知ってるんじゃん！もう...何で隠し事が出来ないんだろう、この人...そこまで言われたら気になるよ」

私が言うと彼は起き上がり私と向き合い、んんっと咳払い。

「...聞くの？」
「...聞く」
「別に聞く必要も無いと思うんだけどな、オレは」
「私は、何で？って気になってる状態の方が嫌だ」
「A、頑固ね。オレ、言いたくないと思ってるのに」
「だったらニノくんは、もう少し隠し事が上手くなって欲しい」

ハァ、と溜息を吐き出したニノくんが「うちの会社には今でもアキラと連絡取り合ってる人間がたくさん居てね」と前置き。
私も頷き、聞く覚悟を決める。

「そいつらから聞いた話だから、噂とかじゃなくって思いっ切り事実なんだけど」
「...うん」

怖い。
私の覚悟なんて、本当に脆い。
あっとゆー間に聞かなきゃ良かったなんて、思い始めてる。

「出版社からインタビュー記事のオファーを受けたアキラが、『咲』を指名した」

仕事だから。
仕事だから。
仕事なんだから。

必死で自分に言い聞かせる。

ニノくんは私を見て、小さく息を吐く。