PARACAGE 8th【ars】 (ページ19)

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264.オススメ。ページ19

翔さんが連れてってくれたお店は、前にバーベキュー用のお肉を注文していた焼肉屋さんだった。

「いらっしゃいませ」と迎えてくれた店員さんが、やっぱり少し雅紀くんに似ていて思わずジィッと見てしまう。

「あ...えっと、僕の顔に何か付いてますか？」

私が目を離せずに居ると、その店員さんはまるで漫画の台詞のような言葉を言いながら自分の顔をコシコシ擦ってる。

「あっ！いえ...っ！あの...知り合いにちょっと似ていて...」
「そうなんですか！まぁ、よくある顔ですからね！」

アハハーと笑う彼は、どう見ても『よくある顔』では無いんだけど...。
私もアハハーと笑い返してると、翔さんは一際大きな声で可笑しそうに笑っていた。

美味しいお肉を食べて、お酒は翔さんが運転しなきゃで飲めないから私も飲まずに烏龍茶を飲んで。
翔さんが優等生では無かったってゆー高校時代の話なんかを聞きながら(私が無理やり聞いたとも言う)楽しく食事して。

お会計の時あの店員さんがレジをしてくれて「僕に似てる方と、是非またいらして下さいね！」なんて言われアワアワしてる私を見て、翔さんがまた大笑いした。

お店を出てバイクに乗る準備をしてると

「寂しくなったら、あの彼に会いに来たら良いかもしれませんね」
「たった1週間ですよ！そんなすぐに寂しくなりません！」
「本当に？」
「...翔さん、さっきは寂しくさせたのも自分の責任だなんて言ってたのに！」
「もうお詫びもしたから良いかなー？と思って」

翔さんは酔っ払ってるのか？と思いたくなる程にちょっと砕けてた。
一緒に食事して、これまで話してなかった事を話してみたりすると距離が近付くものなのかもしれない。
私も何となくさっきまでより、翔さんに馴れ馴れしくなってる気がする。

「あのー...私、馴れ馴れしいですか？」
「えっ？アハハッ、馴れ馴れしくて良いんじゃないですか？」
「え...？」
「一緒に暮らしてるんですから。たくさん兄が出来たと思ってくれたら良いんですよ」

翔さんが「甘えりゃ良いの」と、ヘルメット越しに私の頭をポコンと軽く叩いた。

「カズはちょっと弟感が強いけど」
「アハッ！そうかも」
「潤はちょっと怖いな」
「フフッ」
「智くんはオススメ。優しいし穏やかだし、ニゴとも仲良し」

何故か登場したニゴが可笑しくて笑う。

「僕もオススメですよ？ニゴには引っ掻かれるけど」

さぁ帰りましょ、と翔さんがバイクに跨った。