215.結局。 ページ5
「...え?結局どうゆーコト?」
目の前でキールを飲んでるアカリが、笑ってるような真剣なような、微妙な表情をした。
お互い出勤してて、一緒に早上がりの日。
アジアン料理を出す居酒屋で、私は雅紀くんとの事を話した。
彼から「好きかも」って言われて、一緒に一晩過ごした事を言うと彼女は「くぅぅ」と変な声を出して「ねぇ、咲くんって巧いの?」と身体を乗り出して来た。
だから正直に「一緒に寝ただけで何もしてないし、あの日からも何も無い」って事も言ったらアカリから冒頭の台詞が出て来た。
「えっち、してないの?」
「してないってば」
「でもチューはしたでしょ?」
「...ほっぺにはされたけど...」
「幼稚園児か!」
漫才師ばりの大声で突っ込まれる。
ボケた訳じゃ無いのに。
「いやいや、本当にほっぺにしかされてないんだってば」
「だって咲くんってほら、ヒロシが言ってた、アレ」
「あー、...女の子に緩いって話?」
「...あぁっ!彼女に向かってこんな話は失礼か!ごめん!」
手を合わせてるアカリに何も言えずにいると「怒った?」って不安そうにこっちを伺って来るから「怒ってないよ」ってちょっと笑う。
「彼女...なのかどうかも、ちょっと分かんないんだよねぇ...」
「え?でも好きって言われたんでしょ?」
「『好きかも』って」
「良いじゃん、羨ましいよ?」
「『好きなのかな』って」
「うん」
アカリは何が不服なのか分かんないって感じで眉間に皺を寄せた。
「『好きです』では、無いんだよね。『好きだよ』ってハッキリ言われた訳じゃ無いの」
「えー?同じじゃないの?」
「んー...同じなのかもしれないんだけど、何か自信全然無くって...夢みたいで信じられないってのが大きいのかもしれないけど」
「確かにずっと憧れてた人からそんな言われたら、まぁすぐには信じられないかもしれないけどね」
フフ、と笑ったアカリが私の隣に移動して来て傍らに置いてた紙袋からさっき買った最新号のメンストを取り出した。
表紙は、咲くん。
真っ白の壁を背に真っ黒の服を着て、カメラを睨みつけるような目で右頬を軽く上げてる。
「今、私達のコイバナに出て来てる『彼』ってこの人なんだもんね」
アカリが「相変わらず格好良いね」って、私の肩にポンと手を乗せて笑った。
「そりゃ、なかなか信じらんないか」
「...信じらんないよ」
表紙の中で雅紀くんは、家では見せない表情でこちらを見てる。
よく分かんないけど、何だか今すぐ会いたい。
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作者名:rei | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時:2017年10月17日 22時