PARACAGE 7th【ars】 (ページ31)

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241.一瞬の睫毛。ページ31

目を開けて驚いた。

さっきまで橙色だった世界が真っ暗になってる。
しかも、何だか縦横の感覚がおかしい。あ、そうか私、寝転がってるのか。
...この柔らかいんだか硬いんだか分からない枕は何？

「あ、起きた？」

その声で、心臓がビクンと跳ねた。

まさか...嘘でしょ。嘘でしょ、まさか...。
そぉっと視線を動かすと、雅紀くんが私を見下ろしてる。

目を逸らすように今度は枕だと思ってた物に視線を移すと、それはどう見ても雅紀くんの太腿。

「気持ち良さそうに寝てたね」
「......っ！」

跳ね起きた私の肩には、雅紀くんのブルゾンが掛かってる。

「ごめんなさい...！私、寝てた...？」
「うん。俺の肩でスースー寝息立て始めたから、膝枕の方が安定するかなー？と思って動かしちゃった」
「ホンットごめん...うわー、最低だ私...」

昨日寝れなかった事がこんな所で出てしまうなんて、想像もしてなかったわ！バカか！バカだ！
ブルゾンを雅紀くんに返しながら「ごめんなさい」って、何度も謝る。

「謝んないでよ、Aちゃんの寝顔が見れてこっちはラッキー」
「う...」

うぅぅ...寝起きからこれは...脳みそ揺れるレベルで胸キュンなんですけど...。

「ホントに気にしないで？寝てたって言っても一時間くらいだし」
「一時間も...」
「スマホでゲームしてたらあっとゆー間だよ。お陰で行き詰ってた所クリアできたし」

ほら、ってよく分からないゲーム画面を見せられる。

「Aちゃん」
「...はい」
「何かごめんね」
「え...いやいや謝るのは私だから！」
「フフッ、ううん。...ごめんね」

暗くて、雅紀くんの表情が読み取れない。

ヒュウっと吹いた夜風に思わずブルっと震えると「寒いでしょ、着てて良いよ」って彼はもう一度ブルゾンを私の肩に掛けてくれて

「今度は俺もホントに寒い」

そう言って、ブルゾンごと引き寄せ私を抱き締めた。

きっと雅紀くんは、少し体温が高い。抱き締められる度に感じるコト。
それが好きで、もっと近付きたくなる。
ブルゾンの中で私は、雅紀くんの背中にソっと手を回して彼の肩に顔を埋める。

彼の息遣いが聴こえる。
スゥっと吸う音、ハァ...と小さく吐く音。

雅紀くんが、二人の間に隙間を作った。
彼の前髪が、私の前髪を霞める。

お互いの唇が触れ合ったのは、一瞬だったかもしれない。

目を閉じる余裕も無かった。

雅紀くんの長い睫毛をこんな至近距離で見る日が来るなんて、思ってなかった。