PARACAGE 7th【ars】 (ページ26)

今日:1 hit、昨日:20 hit、合計:1,010,353 hit

236.お昼に食べる朝ご飯。ページ26

「とりあえず、朝ご飯食べよう！」

そう言った雅紀くんは「美味しいモーニング出してるお店があるんだー」って楽しそう。

「早朝から仕事だった時にスタッフさんが教えてくれたんだけどね」
「もしや、エッグベネディクトとかオシャン系？」
「ううん、おっちゃんが作るめっちゃ分厚い卵サンド。あ、そっち系の方が良かった？卵は卵なんだけど...」
「ううん！卵サンド大好き！」

良かった、って雅紀くんが笑う。
そんな彼の後ろに乗って、少しだけ走ってその喫茶店へ。
昔からありそうな、趣のあるお店。
店内には雅紀くんが言ってた通り、おっちゃんが居て「いらっしゃいませ」と声を掛けてくれた。

向かい合わせの席で、たっぷり卵が挟んであって分厚いサンドイッチを頬張る。
普通だったら好きな人の前でこんな食べ辛い物を食べるのは恥ずかしいと思っちゃうんだろうけど、食事だけは家族レベルで一緒にしてるからちょっと麻痺してる。
ポロっと卵がお皿に落ちてもお互い別に気にしない。
口の端に何か付いてたら、教え合う。そんな感じ。

「Aちゃんは、オシャレな朝ご飯とか食べに行ったりすんの？ほら、こないだ何かオープンしてたでしょ。世界一の朝食、みたいなお店」

食べ終わって食後のコーヒーを飲みながら、雅紀くんが訊いて来た。

「行かないなぁ...朝から頑張れないってゆーか」
「アハッ、何か分かる。朝から行列に並ぶって凄いなって思うもん」
「雅紀くん、行列嫌い？」
「嫌いじゃないよ。でも、意味分かんない列は好きじゃないかなー」
「どーゆーコト？」
「朝ご飯食べに行ってるのに、食べれるのはお昼とか。本末転倒なのはやだな」

マイペースでのんびりしてるようにも見えるけど、雅紀くんは合理的な人だ。
準備に時間がかかってるのとか、見た事が無い。

「でも、遊園地でラトラクションに並んだりすんのは好き」
「それは目的がキッチリしてるから？」
「そうそう、並んでる時間も楽しい」
「フフッ、何か分かる」

カップの中のミルクティーをスプーンでクルリと掻き混ぜながら、彼の話を聞く。

「あ、でも」

雅紀くんが呟いた。

「Aちゃんとなら、並べるかも」
「え？」
「お昼に食べる、朝ご飯も」

スプーンを回してた指が止まる。
雅紀くんはフフ、と笑ってコーヒーを飲む。

「今度、一緒に並ぼっか」
「...本末転倒になっちゃうよ？」
「それも楽しいかも」

合理的な彼が、非合理的な事も楽しいかもと言う。
ジワリ、胸が熱い。