PARACAGE 7th【ars】 (ページ15)

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225.腹ペコ。ページ15

ある仕事帰り。
最寄駅に帰って来た私は、後ろから肩を掴まれた。

驚いて振り向くと、私の肩を掴んでるのは潤くん。
私の顔を見て「すげぇ間抜けな顔」って、暴言。

「そりゃ、ビックリしたんだから間抜けな顔にもなるよ」
「なぁA、飯食った？」

私の言葉には何の反応もせず、自分の言いたい事を話し始める。
さすがです、潤くん。

「ううん、まだ」
「何か食いに行かない？俺、腹ペコなんだよね。昼休み取れなかったから」
「うわー、忙しかったんだ」
「ま、その時間にやったお陰で残業は免れたから良しとするわ」

潤くんが歩き出すから、私も一緒に歩き始める。

「潤くん、どこ行く？何食べたい？」
「逆にお前は何食いたい？」
「う...質問返し...」

何食べたいだろう。
考えてると、ヒュウっと寒い風が吹き抜けた。

「さむっ...あ、おでん！」
「おでんか、良いな」
「コンビニで買って帰る？」
「俺、おでんが旨い居酒屋知ってるんだけど。Aはコンビニで良いの？」
「居酒屋で宜しくお願いします」

潤くんが「バーカ」ってケラケラ笑ってる。

彼が連れてってくれたのは、駅前の路地をちょっと入った所にあるオシャレとは言えない居酒屋さん。
店内に若い子は居なくて、おっちゃん達がワイワイと楽しそうに飲んでる。

「お、色男。いらっしゃい」

カウンターの中に居る店主らしきオジサンが潤くんに声を掛けた。

「こんばんはー」
「何か久し振りだなぁ」
「そうだね、最近忙しかったから」
「何だー？忙しかったってのは、そのお姉ちゃんとのデートのせいかー？」

オジサンが私を見てニカーっと笑う。
厳ついけど、笑ったら可愛くなるタイプのオジサン。

潤くんが慣れた感じでカウンターに座り、隣の椅子を引いてくれたからそこに並んで座った。

「ってかデートなんかしてないって、そんな暇無いし」
「仕事優先の男は嫌われるぞー？なぁ、お姉ちゃん」

おしぼりを手渡されながらそう言われても、何と応えたら良いのか。
とりあえず、アハハーと愛想笑い。

「コイツと俺はデートするような関係じゃないの！」

潤くんが言うと、オジサンは「お？」と彼の顔を見た。

「コイツは、俺の友達の彼女」
「何！？じゃあ、浮気か！？いくら色男でも駄目だぞ、浮気は！」
「アハッ、何でそうなんの。友達の彼女だけど、普通に俺の友達でもあるから」

ホッとしてる表情のオジサンに、私も「何かすみません」と笑って頭を下げた。