PARACAGE 6th【ars】 (ページ32)

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207.依怙贔屓。ページ32

長く息を吐き出しながら、そのまま後ろにゆっくり倒れる。

板張りの縁側に背中を預けて、天井を見上げる。
見ようによってはハートの形に見える木目を見付けて、今度誰かに教えてあげようと思った。

ニゴが私の横で丸くなった。
触れてる部分が暖かくて、何だかホっとする。

「なぁにしてんの？」

突然目の前が、ニノくんの顔でいっぱいになって驚きで喉がヒュっと音を立てた。
仰向けになってる私を、彼が上から覗き込んでる。

「お...おかえり...」
「ただいま。何してんの？」
「...何もしてない...」
「だろうね」

じゃあ何で訊いたんだ...。

「おいA、そんなトコで寝んなよ？」

ちょっと離れた所から声がして視線だけで姿を探す。
見当たらない。

「潤くんも居るの？」
「駅前で会ったから一緒に帰って来たんだよねぇ、潤くん」

「んー」って返事。相変わらず声だけが聴こえて姿が見えない。
どこに居るんだろう。
起き上がりたいんだけど、ずっとニノくんが私の頭上で胡坐を組んで顔を覗き込んで来てるから動けない。

「...どいて欲しい...」
「何で？こんな美少年の顔が至近距離にあるなんて、そうそう経験できない事よ？」
「...分かったよ、美しいのはもう否定しないけど少年って所は青年にした方が良いと思う」
「美青年？何かそれ、筋骨隆々なイメージになんない？」
「まぁどうでも良いけど」
「何だとー！？」

両頬をグニィと抓られて「痛ぁい！！」って叫んだら「ジャレてんじゃねぇよ」って潤くんの笑った声。

「潤くん、どこに居るのー助けてー！」
「どこって...ここに居るだろ」

足音が近付いて来たと思ったら、ニノくんの顔の隣にヒョコっと潤くんも顔を寄せて来た。

ちょっと待って下さい...
な...何だこの景色は！？可愛いのと綺麗なの！！
私が処理できる美のレベルを超えてる！！！
神様の不公平を全力で感じてる、今！！！
神様は依怙贔屓がお好き！！！！！

「何なの！？」

思わず口から出た言葉に、二人は揃って「はぁ？」と言った。

「何なの？と言われたら、サラリーマンですとしか言えないけど」
「オレも」

私はこんなキラキラしたサラリーマンやフワフワしたサラリーマンが存在する事を、ここに住むまで知らなかったよ...。

「あ、焼き鳥！」
「おっ！俺達も買おうと思ったのに、もう店仕舞いしてたんだよ！」

二人が私の傍らにある焼き鳥を見て、やっと『美形×2から見下ろされる刑』から解放された。