PARACAGE 6th【ars】 (ページ29)

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204.WOLF。ページ29

「ただいまー」

声に振り返ると、下ろしたリュックをソファに置いた雅紀くんが「楽しそうだね」って笑ってた。

「あ、狼のお帰りだ」
「ちょ...！」

思わず智くんの二の腕をパチンと叩く。

「狼？俺が？」

雅紀くんは笑ったままこっちに来て、智くんの首に後ろから抱き着いた。

「おーちゃんは俺に襲われたいの？」
「んー、相葉ちゃんは可愛いけどおれは女の子しか好きになれないの。ごめんね？」
「えー、残念」

言ってすぐ、雅紀くんは私を見て「うそうそ！俺も女の子しか好きになれないよ！」なんて智くんに抱き着いたまま言うから「説得力無いなー」って笑って見せる。

ちょっと...かなり、ホッとした。
昨日の今日で、雅紀くんにどんな顔してれば良いのか分からなかったから。
こうやってこれまでと同じようにフザけて笑えて、安心した。

「さーてと、おれはそろそろお風呂入ろっかなー」

智くんがスルンと雅紀くんの腕から抜け出て、立ち上がった。

「Aちゃん、焼き鳥ごちそうさま」
「私も、ビールごちそうさま」

ペタペタと智くんが裸足の足音を立ててリビングを出て行く。
入れ替わるように、隣には雅紀くんが座った。

「おかえり、お疲れ様です」
「ただいま、Aちゃんもお仕事お疲れ様！」
「あ、焼き鳥たくさんあるんだけど...」
「食べる！」

まだ何本も残ってる焼き鳥を前に、キャップを脱いで雅紀くんは「いただきまーす」と手を合わせる。

「何か飲み物、持って来るね」
「ん、ビール！」
「冷蔵庫に雅紀くんのある？」
「...ニノのがあるかな...」
「ダメだよー、怒られるよ？」
「大丈夫じゃない？」
「私、共犯者にはなりたくないよー」

笑いながらキッチンへ行き冷蔵庫を開けると、確かに『カズ』って書いてあるビールはある。
その奥には『潤』印のビール。
ちょっと探してみても雅紀くんのビールは品切れ中。
仕方無いから、誰でも飲んで良いサイダーをコップに入れて縁側に戻った。

「はい、どうぞ」
「あ、大人のジュースじゃない」
「最近は子供のジュースも美味しいんですよー？」
「本当ですかー？」

フフって笑いながら顔を近付けて来る雅紀くんに、やっぱりドキドキしてるんだ。

何だこの幸せ空間は！！！！！なんて、どれだけ『！』付けても足りない位に。

縁側から投げ出された脚をブラブラ揺らすと、雅紀くんも同じように揺らす。

焼き鳥を食べる横顔を盗み見て、私はサイダーを飲んだ。