PARACAGE 6th【ars】 (ページ27)

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202.バカだな。ページ27

智くんの掌が、頭の上を行ったり来たり。

「知られたくなかったこと？」
「...ううん、そーゆー訳じゃ無いんだけど...」
「恥ずかしい？」
「.....」

きっとまだ気まずい表情のまんまの私を見て、智くんはあはーって笑い頭から手を下ろした。

「今朝、起きたらニノがまだ居てね」
「あ、フレックスにするって言ってた」
「そうそう、何か騒がしくて起きちゃったから眠いーって」
「...うん...」

その原因が雅紀くんと私だって、智くんはもう知ってる。
それがやっぱり恥ずかしくて、焼き鳥を食べて「美味しい」とか言ってみた。

「おれも狼になっちゃえば良かったかなぁ」

えっ！？
智くんを見ると、いつものようにふわっと笑ってる。
食べてた焼き鳥が喉に詰まりそうになって、慌ててビールで流し込んだ。

「だってAちゃん、おれの部屋にもお泊まりしたでしょ？」
「...そ、だけど...」
「おれのベッドで寝たでしょ？」
「.....うん」
「あの時おれ、Aちゃんをどうにだって出来たんだよ？」

智くんの目の奥にフゥッと熱が帯びた感じがして、少し身体を引いてしまう。

「なぁんちゃって」

彼は柔らかく微笑んだまま、首を傾げた。

「Aちゃんに手を出すなんて、絶対できないよー」
「...えっ...？」
「だって、Aちゃんはずーっと相葉ちゃんしか見てなかったんだもん」
「.....えっ！？」

ずーっと！？
ずーっとって！？
智くん、私の気持ちやっぱり...？

時々、もしかして...とは思ってたけど...

「バレてないと思ってた？」
「...バッ...レて...ないと言うか...」
「Aちゃんが落ち込んだり悲しそうな顔してるのって、相葉ちゃんが絡んでる時ばっかりだったからね」
「.....」
「ふふっ、そんな傷付いてばっかでどう考えてもしんどそうな恋してるAちゃん見てたらさぁ」
「.....」
「何だか、Aちゃんの絆創膏になってあげたくなったの」

「狼じゃなくてね」って、少し意地悪な表情。

「ほら、狼には天罰が下るからダメダメ」

いつか話したおとぎ話。
彼はさっき感じさせた熱をあっという間に消して、今度は小さな子に聞かせるような口調で話す。

「この子は何でこんなに悲しい顔をしながら恋してるのかなぁ？って思ってた。もっと楽しいだけの恋だってありそうなのにって」
「......」
「バカだなぁって」

私の顔を覗き込んだ智くんは、「バカだなぁ」ってもう一度言って優しく微笑んだ。