PARACAGE 6th【ars】 (ページ19)

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194.アラーム。ページ19

幸い、夢オチでは無かったようだ。

目を覚ました私の身体には、雅紀くんの腕が巻き付いている。

まだ部屋は薄暗い。
起きるにはちょっと早い時間なのかもしれない。

「......」

私のお腹の前にある雅紀くんの右手をソっと取って、自分の目の前に持って来てみる。
大きな掌。
小指の下の方に小さなホクロがある。
そのホクロを親指でなぞっていたら、指が閉じて来て開いてた掌はグーの形になった。

「おはよ...」

頭の後ろから、眠たそうな声。

「あ...ごめん、起こしちゃった...？」
「ううん、...今日は元々早く起きなきゃいけなかったの」

彼の言う通り、その直後スマホがアラームを鳴らした。
それは勝手に止まるはずも無く、鳴り続ける。

「...うるさ...ちょっとごめんね」

モゾモゾ動いた雅紀くんがアラームを止めて、もう一度私を抱き締める。

「雅紀くん、起きなきゃ...」
「んー...」
「...お仕事でしょ？」
「あと五分...」

漫画みたいな台詞にフフっと笑うと、雅紀くんも笑った。

寝起き独特の気怠い微睡みの中、そのまま彼の手が一瞬私の胸元に柔らかく触れたと思ったら

「あっ！ごめっ...！」

雅紀くんはガバっと起き上がって、「うそうそ！違う！」とブンブン首を振る。

「ビックリしたー...何なの、俺の手。思いっきり目が覚めた...」

私はと言うと、その一瞬触れられたコトだけでも心臓止まりそうになってて息も絶え絶え。
こちらも思いっきり目が覚めました...！

「俺、準備するけどAちゃんはまだ寝てて良いからね」
「あ...うん...」

ベッドから下りて、雅紀くんが部屋から出て行く。
きっと洗面所。

暫くして部屋に戻って来た雅紀くんが、布団を口元まで上げて寝転がってる私の頭をポンと撫でた。
別にその後、何か言うでもするでも無くて。
ただ、ポンって一回。

それがめちゃくちゃ嬉しくて、胸キュン酷くて、やっぱりこれは夢！？って本気で思ってしまった。
夢だとしてもこんなの、かなりレベルの高い夢だ。
しばらく夢の余韻で思い出し笑い出来るレベルだ。
それが現実だって言うんだから...私は神様にどれだけのお礼を渡せばいいんだろう。

まるでドラマでも観てるように、雅紀くんが準備してる姿をベッドから眺める。
彼はクローゼットの中から適当な感じで選んだ服をベッドの端に置いて、Tシャツをガバっと脱いだ。

「あ、見られてた」

雅紀くんが意地悪な顔したから、慌てて布団を被る。
布団の向こうで雅紀くんが笑ってる。