PARACAGE 6th【ars】 (ページ13)

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188.いつもと違う。ページ13

何だか、想いが溢れてしまいそうだった。

いつもと違う場所
いつもと違う表情
いつもと違う会話

何か一つでもいつもと同じにしなきゃ、溢れてしまう。
隠してる想いが、ポロポロ、零れてしまう。

「けど、あれだね！海って良いね、大いなる母だなんてよく言ったものだよねぇ！」

同じように出来るのは会話だけだと、私はいつものように軽く話し始めた。
重い想いを隠して。

「ホントそうだねぇ」
「何かこう...海ってさ、全てを包み込んでくれる感じしない？私はする！」

両手を広げてスゥーっと息を吸い込むと、雅紀くんが笑った。
よし。いつも通り。
もう大丈夫。

...って、思ったのに。

「Aちゃんも、俺にとっては同じだよ」
「ん？何が？」
「Aちゃんってさ、全てを包み込んでくれる感じがしない？俺はする」

さっき私が言ったのと同じ言い方で、雅紀くんが全然違う事を言う。

広げてた両手から力が抜けて、ドサッと砂浜に落ちた。

...何言ってんの？雅紀くん...

「俺、Aちゃんに過去のコト話せたの、嬉しかったんだよ？」
「...そ...なの...？」
「フフッ、そうなの。何か、俺もう大丈夫かもーとか思うくらい」
「…それは...良かった...です...」

どう返すのが正解なのか分からない。

ザザー...ザザーン...と、波音は繰り返す。

「だって、誰にも言えなかったんだよ？あ、うちのみんなは別だけど。女の子には絶対、話せなかった」
「あ...、それはアレだね！私はうちのみんなと同じだから話せたって事だね！」

『女の子』って見てないから、テラハウスのみんなに話すのと同じように話せた...って事だよね...。
分かってたけど、悲しくて虚しくて、油断したら泣きそうだから

「そう言えば潤くんに女子力分けてって言ったら、嫌だって言われたんだよー」

なんて、笑ってみる。

だけど、アハハーって大袈裟な程に笑ってみても、やっぱり溜息が出そうになってグッと飲み込む。

覚悟して恋するって、決めたくせに。
心がポキポキ折れる自分が、嫌になる。

じゃあ諦めろよ！って思うのに、私の心は全然言う事を聞いてくれない。

繰り返す波の音。

それに混ざって、砂が動く音が聴こえて

え？と思うと、隣で雅紀くんが立ち上がった。

そして私の後ろに回って腰を下ろし、座る私の身体を両脚で挟むように囲む。

「...Aちゃんは、みんなと全然違う」

掠れた彼の声は、耳元で聴こえた。

私は、背中から彼の両腕に包まれていた。