PARACAGE 6th【ars】 (ページ12)

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187.波音。ページ12

空には、チラホラ見える星。

「見えたー！」
「フフッ、見えたね。綺麗」
「ちゃんと星、あったんだなー」

彼の口元が、ゆるっと上がった。

「Aちゃんとは、同じ空が見れる」

前に、雅紀くんが話してくれた事を思い出す。
『同じ空の下』だなんて、気休めだ、キレイゴトだと言った彼が言うその言葉に胸の奥がギュウ...っと縮まる。

ザクザクと砂浜を歩いて、靴の中に砂が入って

でもどうせ靴を脱いで砂を出した所でまた入って来るなぁ...って思って、そのまま歩く。

そしたら、雅紀くんが立ち止まったと思ったら徐ろにスニーカーを脱いでそれをひっくり返した。
中からパラパラと砂が零れる。
だから私も立ち止まって、スニーカーを脱いで砂を出したら、雅紀くんが「砂入るね」って笑った。

砂浜に腰を下ろして、真っ暗な海を眺める。
吸い込まれそうな黒は、少し怖い。

なのに、規則的な波音は何だか安心する。

お互い何も話さないまま、数分。
先に口を開いたのは雅紀くんだった。

「ホントなら、今頃クラブに居たかなー」
「.....」
「咲くーん！って近付いて来る女の子と楽しく飲んで」
「.....」
「流れで軽くアソんで」

つまらなさそうに淡々と話す彼の声を聴く。

「けど結局虚しくなって、いつまでこんなコト続けんのかなー...って思って」
「.....」
「でもそれを考えんのも面倒になって、またおんなじコト繰り返して」

フッ...て投げやりに息を吐いた雅紀くんの横顔を見る。

雅紀くんも、私を見て

力無く、微笑んだ。

自分の全てを受け入れたようにも見えるし
自分の全てを諦めたようにも見える。

でもそれがどちらなのか分からないでいたら、雅紀くんは「もう、ホント悪い方向に逃げてばっか」って、アハーっと緩く笑った。

また、沈黙。
どう声を掛けたら良いのか、頭の中で色んな台詞がぐるぐるするけどそのどれも喉からは出てくれない。

「...Aちゃん、何かありがと。海に来るなんて俺、考えらんなかった」
「えっ...ううん！ただの思い付きだし！ドラマの受け売りってゆーか...そんな感じで...」
「フフッ、けど本当にやな事とかどーでも良くなる気がする」
「.....そっか。雅紀くんが少しでも楽になれたなら、思い付きでも言って良かったよ」

雅紀くんが何を考えてるのか分からないけど、波音に合わせて息をしてるように見えた。

風を受けて呼吸する雅紀くんが綺麗で

この瞬間を、絶対に忘れたくないと思った。