PARACAGE 6th【ars】 (ページ11)

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186.赤信号。ページ11

門扉を出た所で、雅紀くんが私を振り返る。

「乗って？」
「あ...うん...」

そうだよ、一番の問題はこれ。

とりあえず雅紀くんの後ろに跨り、手をどうするか考える。
腰を掴むか...でも翔さんも言ってたけど擽ったいかな、やっぱり...

だからって最初からガバッと抱き着いたり出来るわけが無い！
何なら腰を掴むのだって、私の手は迷ってるんだから。

ずっとずっと雅紀くん...と言うか、咲くんの腰が好きだったんだ！私！
男の子なのに立ち姿によっては綺麗なアールを描いてて、なのに骨っぽくて、すごく色っぽくて、そんな腰を私はずっとずっと崇めていたんだ！
何なら手を合わせたい程、尊い！

「Aちゃん？」
「あっ！？あ、ちょっと待ってね...」

どうしたら良いか分からなくなって、シャツの背中をギュッと握る。
肩甲骨の位置に赤い花の刺繍がある、あのシャツ。

何だか、色んな想いが溢れて来てクラっとする。

「安全運転はするけど、さすがにそれだけでは俺が怖いよ！」

雅紀くんが笑ったから、慌ててその手を離した。

「しがみついてくれてる方が安心かなー」
「しがみ...つく...」

そう言われてしまうと、そうするしか無い。
言われなくても、それが一番安全なのは分かってるんだし...。

そろりと両腕を雅紀くんのお腹に回して、緩く手を組む。
一気に身体が近付いて、もう息をするのもやっとな程に緊張。

「しゅっぱーつ」

雅紀くんがエンジンをかけて、カブ子を発進させた。

細いのに広い背中。
骨っぽくて、柔らかい部分なんかどこにも無くて。

カーブを曲がる時に見える横顔が、もうホント、雑誌から出て来たみたいに綺麗で。実際、雑誌から出て来た人なんだけど。

信号待ちの度に振り返ってくれるのが、嬉しくて。
「大丈夫？」って訊いてくれるのが、嬉しくて。
「お尻痛くない？」ってフザけた感じで訊いてくるのも、嬉しくて。

私は雅紀くんの後ろで信号が赤になるのを、密かに願う。

・

海についたのは、1時間程走った頃。

カブ子を停めてヘルメットを取った雅紀くんが、頭を軽く振った。
私も同じようにヘルメットを外して、一応前髪を指先で整えてみる。

2人並んで海の方へ歩いていると

「んー！気持ちいい！」

両手を挙げて、雅紀くんが伸びをした。

潮の香り、波の音。

暗くても、水は少しの光を反射させている。

風が雅紀くんの髪とシャツをふわりと靡かせた。

「あ、星だ...」

夜空を見上げた雅紀くんが呟く。