PARACAGE 6th【ars】 (ページ1)

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176.留守番。ページ1

ニノくんを見送ってからコンビニでサンドイッチを買って帰って、朝ご飯にそれを食べて。
リビングでウトウトしてた、午前11時。

電話の音で目が覚めた。

スマホじゃなくて、家の電話の方。
急いで電話に出る。

「はい。櫻井です」

もう照れる事も無く言える。
会社で電話に出るのと同じ感覚。

「あ、A？」

少し鼻に掛かった低い声。

「え、潤くん！どうしたの？」
「Aって、今日休み？」
「うん」
「暇？」
「暇...何で？」

休みの日に暇な女子。何だか恥ずかしい。

「ちょっと頼みがあるんだけど...良い？」
「うん、私に出来る事なら」
「俺の部屋にA4のファイルがあると思うんだけど、見てくんない？」
「え？部屋、入っても良いの？」
「別に見られて困るもんは何も無いし」

潤くんがそう言うなら。
子機を持って階段を上がり、紫のドアに手を掛ける。

「お邪魔しまーす...」

呟くと、電話の向こうで「律儀」って潤くんが吹き出した。

潤くんの部屋は、思ってた通り綺麗に片付いてる。
シンプルな家具とファブリック、そしてたくさんの映画ディスク。
どんなタイトルがあるのかじっくり眺めたい所だけど、今は我慢。

「ファイル...えっと、どこにあるの？」
「多分、机」

言われて、部屋の奥にあるパソコンデスクの前まで行くとキーボードの上にファイルが置いてあった。

「あった！」
「やっぱりか...」
「これ、どうするの？」
「ホンットに申し訳ないんだけど、...俺の会社まで持って来てくんない？」

私がファイルを手にしてると「午後の会議で必要なんだよ」って潤くんちょっと、必死な感じ。

「えー、どうしよっかなー」
「マジで頼む！」
「んー、暑いしなぁ。フフッ」
「...お前...結構Ｓか？」
「潤くんにだけは言われたくないけど」

笑いながら潤くんの部屋を出て、自分の部屋に戻る。

「今から行ったら良い？」
「サンキュ、助かる」
「会社、どこだっけ？」

子機をハンズフリーにして、とりあえず軽くメイクをしながら話す。
さすがにこれはスッピンで行けない。

最寄駅と会社名を教えて貰ってから、電話を切った。

5分程度で薄化粧を終わらせ、着替えて眼鏡をかけて玄関まで下りる。

「あ...そうだ」

夜から雨だって、ニノくん言ってた。
潤くんなら傘持って行ってる気もするけど、一応折り畳みを持って行っておこう。

彼の折り畳み傘がどれか分からないから、自分の折り畳み傘を鞄に入れて家を出る。