171.無表情。 ページ31
「せめて全部隠して、嘘ついてくれたら良かったのにね」
「......」
「オレの子だよね?なんて馬鹿なコト訊いちゃったのが駄目だったんだなぁ。フフッ、全部ご丁寧に説明されちゃったよ」
「......」
「えっちが下手だからもうイヤだーとか言われた方がずっと良かった。...あ、ちょっとショックか。やっぱやだな」
ヘヘって緩く笑ったニノくんが、大きく息を吐き出す。
「子供出来たなんてめでたい話なのに、おめでとうってオレ...さすがに言えなかった」
「そんなの言わなくって良いよ!」
「フフッ、何で怒ってんの」
「だって...!」
だって、腹が立つ。
そんな人が居るなんて、悲しくなる。
そもそも旦那様が居るのに愛人を作ってる時点で私の中ではありえないのに、その上こんな...こんな事って...
まさか、彼女がそんな酷い結末を用意してたなんて。
「カノジョ、仕事辞めるんだって。もちろん、妊娠したからって会社に言うでしょ?」
「......」
「そしたら嘘ついても結局オレにバレるから、隠さない事にしたんだって」
「......」
「それにしても赤裸々に告白し過ぎだよね!すげぇパンチあったんだけど」
「本当の事なんて聞きたくないよね...えっち下手だからで良いのにね...」
「だから、やっぱそれも嫌だってば!下手じゃないし!試してみる?」
私の両手を握りブンブン上下に振って、ちょっと笑ってる。
さっきからずっと、ニノくんは笑ってる。
「ニノくん」
「んー?」
「今更無理しないでよ」
「......ん?」
「勝手に抱き締めたり勝手に鼻噛んだりしたくせに。今更、そんな無理しないで」
唇をキュっと内側に入れた彼は暫く黙ってから、私の肩を掴んでクルっと180度向きを変えさせた。
「...背中、貸して」
背後から、ニノくんに抱き締められる。
肩に回されてる腕が、震えてる。
「アイジンって気楽なはずだったのに」
「うん」
「本気にならずに済むって思ってたのに」
「うん」
「......いつかはオレだけのヒトになるって信じてたのに」
「...うん」
「オレ、好きだったのに......」
そう言って私の肩に顔を押し付けたニノくんの、喉の奥から絞り出すような声にならない声が身体に響く。
彼が鼻を啜る音が悔しくて、悲しくて。
震える腕をギュっと抱き締めたら、鼻の奥がツンと痛んだ。
だけど、涙が溢れ出す前に止まったのは
リビングに居る私達をダイニングから見てる、無表情な雅紀くんと
...目が合ったから。
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作者名:rei | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時:2017年7月13日 14時