Prince of Vampire 10

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足音と独特の気配で分かる。






ガチャ、




ノックをしない所が、同属、まして親子として築き上げた阿吽の呼吸という所だろう。








「…まだやってるのか」






父、でありこの会社のトップである人物は、深夜まで業務をこなす息子兼部下を労うとばかりに、優しい声色で俺に話しかけた。









「夜一気にやった方が早いから。




…って教えてくれたのは父さんだよね」






「そうか」








少しの間沈黙が流れる。










「…山中さんの退職日が決まった」






父さんの方からその名前が挙がるとは思わなかった。






「さっき、申請が出ていたんだ。


当初の予定では、体調次第という話だったが、正式に2ヶ月後に決まった」








「…そう」






「引き継ぎもあると思うから、また何かあれば人事部から連絡が行く」








淡々と告げる父さんの横顔を一度見つめた。





「…父さんは、相当優秀な人を俺につけようとしたんだね。




でも山中さんは傷ついてたよ、


父さんが俺に付くように彼女を手離したこと」









「……それは、仕方ない。
彼女には、ずっとお前のことを支えてもらおうと思ってたから」






「ずっとって？」






「…」






別に父さんを困らせたいわけじゃない。


でも、言わなければいけないことがある。






「俺ね、父さんには悪いけど、


将来、父さんと違う道を選ぶよ」






「後は継がないってことか？」






いつだって偉大な人。
動揺することなく落ち着いた口調。








「…ううん。
俺で良いなら継ぐのは構わない。


だけど、俺は父さんと違って、不死身にはならない。


吸血鬼の身体のまま、だけど人間と同じ、寿命が来たら死ぬ」






「……」






さすがの父さんでも、初めて直接打ち明けた俺の決意に、黙り込んでしまった。

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