ゝ･拾伍 ページ15
「とはいえ呪術師になれるほどの方はまだ存命ですし……貴方の御父上もまだ生きてらっしゃいますよ、多分」
「多分」
「貴方が産まれたあと行方を眩まされてしまったので」
蒸発しとるでオトンがよ！
いやでも、蒸発するわな。私でも蒸発するわそんな家。
「まあ、その殺しの役割を担っているのがうちでして。男だけでなく家の邪魔になる者や、用済みの者なども随分殺しました」
「なんで殺すの？」
「呪いを作るためです」
一瞬、理解が及ばなかった。
呪いを作る？なんのために。そんなことをして何になるのか。いやな音を立てながら鼓動が早まる。
「お嬢さんに食べさせるための呪いを、作るために」
心臓が止まる思いがした。
Aは実家で、多くの呪霊を食べた。術式を持ってるのと、持ってないのがいた。それが何体、何十体、何百体居たか、考えなくてもぼんやり分かった。
1000年前からずっと、それが続いていたのだとしたら──それは実に、胸糞の悪い話だ。
「我らの一族も、死すれば貴方の糧となるべく呪いとして生まれ変わることを強いられる。私は生まれにして闇に落ちる運命です。早く死んだ方がいいものです。ですからどうか、私に情を抱かれぬよう──」
ああ、でも。私は燕の言葉を遮って、口を開く。
「それをさせていたのは扇一の家で、私は扇一の次期当主だ。なら、私の方が君よりずうっとクズだよ、燕」
君は君の家がクズだから、自分も同様にクズなのだと言った。ならば私にもそれが適応できるはずだ。
それを聞くと燕はまた困ったような顔をして、「そんなことは」と言う。私は首を振る。
「燕、そうだね。私も君もクズだ。でも私は、君みたいなやさしいクズが好きだよ」
「それは、……勿体ない、お言葉です」
「だから燕、私の為に生きてね」
燕はぱっと顔を上げた。黒曜石の丸い瞳が揺れていた。
「私に食われる為に死ぬんじゃなくて、私を守る為に生きなさい。私は君が大事だよ」
私は我儘だから、一度触れてしまった命に、心に、存在に、消えて欲しくはないのだ。
燕は目を見開いて、きゅっと唇を引き結ぶ。そして、柔らかく破顔した。
「A様の命とあらば。この燕、この身を捧げて貴方をお守り致します」
そうだ、それでいい。私も彼に笑顔を返した。君の笑顔は美しいから、出来れば笑っていてほしい。だから、生きていてほしい。その笑顔が見られなくなるのは、素直に嫌だと私は思う。
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ニノ崎(プロフ) - めっちゃ面白いです，，，好みドストライクです！これからも応援しております。後，伍話目の美美美ー美・美ー美美ってまさか某マルハーゲ帝国()のパロですか() (2021年3月2日 18時) (
レス) id: 159ece0998 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - みもなるーと。さん» 丁寧なご感想たいへん嬉しいです、ありがとうございます！燕は扇一の自立に必要な犠牲だったのでちょっと……ね……これから扇一夢主、ガンガン男前に磨きがかかって参りますので何卒お楽しみ頂ければ幸いです！ (2021年2月26日 19時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)
みもなるーと。(プロフ) - なんだかクソデカ感情を向けてしまった（？）夢主に恋してしまうかと思ってしまいましたね… 最近は天候が崩れやすいのでお体に気をつけて無理せず頑張ったくださいチュチュ… (2021年2月26日 17時) (レス) id: d641c5035a (このIDを非表示/違反報告)
みもなるーと。(プロフ) - な、なんだこの小説は今まで生きてきた私へのご褒美かご褒美なのか。夢主のどこか達観した想像力などに惹かれました。燕さん私の推しだったのに食べちゃいましたね…やはり愛とは、呪いなのかしらと再認識できた気がします。素晴らしい小説をありがとうございます。 (2021年2月26日 17時) (レス) id: d641c5035a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - 43yomi1さん» ありがとうございます〜〜！！！更新頑張ります！！ (2021年2月26日 16時) (レス) id: 96fc810d06 (このIDを非表示/違反報告)
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