自己の介入を自覚するオタク ページ36
文化祭が明け、羽京兄ちゃんと楽しいディナーと洒落こんだ大体三日くらい後。の、放課後。
私は大樹に引っ張られながら、杠の手を引っ掴んで隣のクラスへとやって来ていた。言わずもがな千空と大樹のクラスだ。
「千空ー！」
声デカすぎて耳キンキンする。
あまりの爆音に、隣でぐらぐらしてしまっている杠を見て、苦笑する。ごめんな加減のできない幼馴染が。
「軽い荷物を乗せて試すって言ってたじゃないか、桐が手芸部の小川杠さんに頼んでくれて、四体！乗客を作ってもらったぞー！」
あ、ちゃんと私もいる。不思議だなあと思う。かつて見ていた場面の中に、私が組み込まれている。
机の上の、千空と、大樹と、杠と、私の編みぐるみ。なかなか感慨深い。
「自分の編みぐるみとか超羞恥プレーなんですけど……てか、なんに使うのコレ！？」
「見てのお楽しみだよ杠〜。なんせ、世界一とんでもねえガキの工作だ」
「ククク、ちげえねえ。最終チェック手伝えよ、桐」
こういう発言を聞くと、私は多分千空の中でメカニック的な立ち位置に置かれてるんだろうなと思う。私は快く頷く。頼られるのは嫌いじゃない。
さて大樹がロケットを担ぎ、製作者の一人に加えられてしまった杠を伴い、私と千空が先頭になって、学校からほど近い山を登ることとなった。
「今回の成功確率どんぐらい行くと思う」
「そだねえ、いい線まで行くとしても……半々かな」
「だろうな、多分今回も爆散ルートだ」
千空はなんでもない事のように言った。凄いな、と思うのは、彼は決してそれを諦めないということについて。
これまで沢山の失敗と挫折を積んできたのに、それでも彼は前を見ている。眩しい人だ。私はきっと、そこまで真っ直ぐにはいられない。
「過程と結果どっちが大事なんだと思う？」
私はそんなことを、ふと零した。千空の目が、ふと私をとらえる。
猩々緋。いや、金赤色か。海外色ならコチニール。君の目を描くなら、私は油彩を選ぶ。きっと君はキャンバスの上で力強く、眩しくあるだろう。
目を細めて、私はその瞳を見返した。今日も驚く程に美しい。
「失敗したとして、『上手くいかないのを確認した成功』なんだし」
「エジソン」
「流石。ま、『大工は削り屑によって知られる』のだから、結果がどうであれ別にいいんじゃない？と私は思います」
「あﾞー、それは知らねえな」
「スウィフトだよ」
ほーん、などと気の抜けた返事を返して、千空はまた前を向いた。
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ももこ - めっちゃおもしろかったです！文才過ぎてガチ小説読んでるみたいでした！ (11月9日 18時) (
レス) @page20 id: 1bc8f0fbc1 (このIDを非表示/違反報告)
癒し系猫(プロフ) - 名前変換は出来ないのでしょうか? (5月29日 21時) (レス) @page1 id: 0e8640f8c4 (このIDを非表示/違反報告)
ぱるさん(プロフ) - あやめさん» ｵﾜﾜ〜〜〜〜ありがとうございます〜〜〜〜！！！！ (2020年12月12日 20時) (レス) id: 2cc2b8ed9f (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - めちゃくちゃ面白かったです！！これからどうなるのか楽しみです！！！更新楽しみに待ってます！！！ (2020年12月12日 16時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
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