こんにちは、やさしい世界【HUNTER×HUNTER】

でも使ったら使ったで便利 ページ41

ぶっちゃけ私、念で細かいことやるより肉弾戦の方が好きだったりする。


念は使ってる最中も色々考えることが多い。例えば私の場合は「破れたバイオライト(ヘブンズフィール)」で何を付与するかとか、「霞の矛盾(デカダンス)」をどこに纏うかだとか。


けれど肉弾戦なら、どこを殴れば相手が倒れるか、向かってきたらどうするか。「どう動くか」だけを考えていればいい。実に楽だ。



「いつまでやられてる気かな？」

「飽きるまでかな♤」



…でも、こいつはどう叩いても倒れない。いや、体が倒れても心は折れないのだ。だから強い。


先程のハンゾーの気持ちが今は少しわかる気がする。どうしても「まいった」と言わないような相手は、敵として実に面倒だ。それがデスマッチでないなら、尚更。



「くっく♡良い蹴りだね♢」



先程からずっと蹴りこんでいるのだが、一向に「まいった」と言う気配がない。


面倒臭いな。何度目かわからないけれどそう思った。



「A！勿体ぶってる場合じゃねーだろ！」



すると唐突にそんな声が上から飛んでくる。私はヒソカのカウンター攻撃を避けながらそちらを見た。キルアだ。身を乗り出すようにしてこちらを見ている。遠くから見ても可愛い。


私は彼に向けて手を振った。



「やっほーキルア、見てるー？」

「呑気か！いいからさっさと「奥の手」ってやつ使えよ！」



あっ、キルアってばそれが気になってたのか。もー可愛いなキルアってば、ていうかクラピカとの話盗み聞きしてたんだね可愛いね。


私は若干緩む頬を抑えもしないでヒソカに向き直った。



「「奥の手」なんてあったんだ♧」

「うん、極力使いたくなかったんだけど…キルアに言われちゃ仕方ないな。

「破れたバイオライト(ヘブンズフィール)」」



奥の手。まあつまらないし簡単で単純な話だ。


ヒソカは私が能力名を呟いた瞬間にぴた、と動きを止めた。


目だけが戸惑ったように私を見ている。私はにこ、と微笑んでやった。



「媒体は私の「声」。エンチャント、「洗脳」」



前世の記憶があるって本当に素敵だ。他作品の能力だって使えちゃうんだから。ありがとう心操くん。


動かなくなったヒソカを見て、受験者たちが騒ぎ始める。私はそれを尻目にまた囁いた。



「参ったって言ってよ、ヒソカ」



語尾に「♡(ハート)」がつきそうな勢いで言ってやれば、ヒソカはぐ、と喉を鳴らした後、「…まいった♤」と言ったのだった。

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