111話 ページ41
私はハッキングした情報から兄と瓜二つの男、八咫神成の出現した現場に足を運んだ。
横浜の湾岸近くの裏路地は人が居らず、取引するには最適な場所だ。
電灯がチカチカと点滅する中、私は頭の中で調べた情報を整理する。
八咫神成の経歴は驚く程に何もない。
この何も無いという事が私を更に焦らせる。
もしかしたら兄がこの世界にいきなり放り出された為に経歴が無いのかもしれない。
生きるために手を染めなければならなかったのかもしれない。
もしくは経歴を消した兄に似た男を使って私を動揺させようとしているのかもしれない。
色々な推測が出ては消える。
いずれにしても私は八咫神成に接触しないわけにはいかなかった。
街灯に蛾がパタパタと群がっている。
ジジッと電灯の点滅する音が変に頭に残った。
ヒュッと音がした。
その後に鋭い痛みが走る。
薄く皮膚を削ぎとるように目に見えない何かが飛んできた。
後ろを向くと私が求めていた人が立っていた。
私は生唾を飲み込んだ。
「貴方が八咫神成ですか？」
兄の名前はそんな名前ではなかった。
どうか別人であってくれ…しかしそんな希望は儚く散った。
八「他人行儀な口振りはやめてよ、A。」
僕達は兄妹じゃないか。
はっきりと告げられて私の体は強張った。
嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
だって兄さんがいるはず無い！
それに優しくて少し抜けてて、いつも私の味方だった兄さんが、人を殺すなんて…
信じられない。否、信じたくない私は
「なら私の名前をちゃんと言ってよ。」
ここで太宰と呼んだら偽物だ。
呼べ、太宰と。呼んでくれ…！
八「富受A。僕の可愛いめんどくさがりの妹だろう？」
世界は残酷だ。
私の望みを簡単に踏みにじっていった。
穏やかな表情の兄は私に近寄って私を抱き締めた。
八「今まで一人で辛かっただろう？安心して、これからは僕が一緒だ。」
顔面蒼白の私を落ち着かせようと背中をポンポンと擦ってきた。
昔と変わらない仕草に私の鼓動が更に加速する。
呼吸ができない。苦しい。
過呼吸になった私に心配そうな表情であやしてくる。
やめろ、やめろ、やめてくれ！
私は八咫神成の手を振り払って後ろに逃げた。
尻餅をついて冷や汗だらだらになりながら壁にもたれ掛かった私を不思議そうな目で八咫神成は見てきた。
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甘栗(プロフ) - ウナさん» どんどん中也さんの活躍増やしていこうと思ってます！ドキドキしてもらえるように頑張ります！ (2019年4月4日 19時) (
レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - うわあ、もうかっこよすぎです、中也！！やばいですよもう！凄いです！ (2019年4月4日 18時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
甘栗(プロフ) - チョコ味の白兎さん» 確かに口調が敦君みたいですね(笑)色々な関係が動く予定なので楽しみしててください！ (2019年3月30日 20時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
甘栗(プロフ) - 雪宮暦さん» カッコいい中也を目指してるのでそう言って貰えて嬉しいです！ (2019年3月30日 20時) (レス) id: 8ba49da6fd (このIDを非表示/違反報告)
チョコ味の白兎 - 最後のセリフが敦くんっぽい！ここからの展開が楽しみ！ (2019年3月30日 17時) (レス) id: 8cc010c4ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：甘栗 | 作成日時：2019年2月28日 16時
