【その場で立ち尽くす ４】 ページ47
「貴方と話すうちにAさんについて知りたいと思うようになり、興味が湧きました。何度繰り返しても貴方と過ごす時間はあっという間で、“楽しい時は早く過ぎる”という言葉を体感したんです」
褒められているのが何だか照れくさいやら恥ずかしいやらなのだけれど、繋がれた両手から距離を取ることはできない。
……そんな私の心情に反して岩崎さんは嬉しそうだ。
「ですが、私が知っているのはあなたの一面に過ぎない。私はもっとあなたのことを知りたいんです。先程、貴方が仰った“育った場所”にも興味があります。貴方が体験してきたこと、経験してきたことが積み重ねられたその結果、Aさんがいる、そう考えています」
『……』
「貴方のことをもっと教えて下さい。どんなことでもいい。何か抱えていることを解決するための、力になりたいんです。Aさんをもっと知りたい」
そう言って岩崎さんは私の手を自分の胸の前絵と移動した。どき、どき、と手を通して鼓動が伝わる。
「それではいけませんか」
尋ねるように、それでいて諭すように岩崎さんは言う。こんなことを面と向かって言われた経験などなかった。岩崎さんはこういう大切なことでからかって遊んだり、冗談で言うような人ではない。落ち着いた聡い人なのだ。真っ直ぐに向けられている、その“気持ち”はきっと本物だろう。
研究者である岩崎さんだからこそ、話すのは怖い。信じてもらえる自信がない。
でもだからこそ、分かってもらうには向き合って話さなければ。
『わかり、ました』
しっかりと目線を合わせ、繋いだ手に力を入れて握る。岩崎さんは私の言葉を聞いてほっとしたように笑った。
『はじまりは、留守番でした』
私が見てきた世界、体験した不思議な出来事。自らの中に秘めていた思いは、一度溢れ出してしまえば止まらない。
舞踏会がお開きになっても話は尽きなかった。
家のこと、家族のこと、これからの事。
話している間、手から伝わる岩崎さんの体温に安心していた。まだまだわからないことも不安もたくさんあるし、それらが全て消える事はないだろう。でも、これからは1人で頑張らなくていい。岩崎さんがきっと力になってくれる。
先が真っ暗だと、絶望しか感じていなかったけれど、この調子ならやっていける。
ふと、岩崎さんと目があった。
なんだかおかしくなり2人でクスクス笑い合う。
夜空には真っ赤な満月が輝いていた。
【岩崎桃介ルート・終】
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小崎相良(プロフ) - Koma?さん» お返事遅くなりすみません！ありがとうございます！ (2022年1月22日 18時) (
レス) id: 6783c5a7bd (このIDを非表示/違反報告)
Koma?(プロフ) - ちょーぜつ面白いですね！最近めいこい見始めて最初に出会った作品がこれで良かったです！ (2022年1月16日 11時) (レス) id: 286de14237 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 二酸化酸素さん» ありがとうございます！嬉しいです！ (2021年7月21日 22時) (レス) id: b1e523f101 (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - 本当にゲームをしてるような気分になりました (2021年7月19日 1時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 鈴華さん» 楽しんでいただけたなら幸いです(o´艸`)！こちらこそ閲覧頂きまして、ありがとうございました！ (2020年8月4日 23時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2020年2月23日 10時
