Another:泉 ページ5
藤田が男たちを片付け、駆け寄ってきた。
僕とAの様子を伺うと、小声で話しかけてくる。
「どうした」
「……拒絶されるんだ」
「拒絶?」
「混乱してるんだ。人に近づかれることを恐れてる。せめて足枷だけでも外したいんだけど」
「……」
僕は軽くため息をつく。その拍子にAがビクッと肩を揺らした。
「だれか……たすけて……」
消え入りそうな小さな声が、静かな空間に響く。
その声の弱さに、僕の体は血液が抜けたかのように冷たくなっていく。
先ほどまでの懇願とは違う、力のない弱い声だ。
いつもの笑顔も真剣な顔もそこにはない。虚な目が地面を睨みつけていた。目から伝う涙を見て助けたいとは思うものの、それと同時にやはり僕が無理に声をかけない方が良いような気がしていた。
どうすることもできない悔しさを改めて実感する。
目の前にいるのに救えない。その事実が歯痒くて、拳を握り締めたそのときだった。
突然、僕の肩からうさぎが飛び降りた。うさぎは華麗に着地すると、そのままAの元へと駆け出す。
「あっ」
「今度はなんだ」
「や、その、」
「……物の怪か」
「…………」
藤田はサーベルを抜こうとはしなかった。真っ直ぐな瞳で、こちらを見つめている。
僕は藤田の言葉に答える代わりに深く頷く。
そして、“1人 ” と “1匹 ” のやりとりを静かに見守った。
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小崎相良(プロフ) - Koma?さん» お返事遅くなりすみません!ありがとうございます! (2022年1月22日 18時) (レス) id: 6783c5a7bd (このIDを非表示/違反報告)
Koma?(プロフ) - ちょーぜつ面白いですね!最近めいこい見始めて最初に出会った作品がこれで良かったです! (2022年1月16日 11時) (レス) id: 286de14237 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 二酸化酸素さん» ありがとうございます!嬉しいです! (2021年7月21日 22時) (レス) id: b1e523f101 (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - 本当にゲームをしてるような気分になりました (2021年7月19日 1時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 鈴華さん» 楽しんでいただけたなら幸いです(o´艸`)!こちらこそ閲覧頂きまして、ありがとうございました! (2020年8月4日 23時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2020年2月23日 10時