【置屋に帰る ４】 ページ39
一通り伝え一息をつく。川上さんは何も言わなかった。真っ直ぐ向き合える人だ。きっと真剣に考えてくれているのだろう。
もちろん、自分で話していて現実味のない話だなあと思うし、作り話だと思われても仕方がない。自己満足だし、困らせてしまうとわかっているけれど、これ以上隠し事はしたくなかった。
たとえ受け入れてもらえなくても、拒絶されても今までの全てが消える訳じゃない。川上さんと過ごした時間も思い出も変わらないし、今の私なら明治時代ですぐに野垂れ死ぬ事はないだろう。
ある程度の常識も、この時代での働き方も身につけたのだから……
そう自分に言い聞かせる。
「……なるほどなぁ」
『かわ、かみさん？』
「いや、Aが真面目で少し鈍臭いってことを知ってるからこそ、お前がこんな嘘をつくとは思えない。そこそこ一緒に過ごしたからな、俺はAの話を信じるぜ」
『！』
「未来から来たってのは驚いたけどよ、よくよく考えれば、芽衣と初めて会った時も似た様な装いだったしな。もともと何か抱えてんじゃねえかとは思ってはいたから、話を聞いて胸に支えてたものが取れたぜ」
とても優しい笑顔だった。川上さんが信じると言ってくれたこと、話を聞いてもなお、態度を変えないで接してくれることが嬉しくて、私からもう一度川上さんしがみつく。「うぉ？！」と、頭上から驚いたような声が上がるが気にしない。腕いっぱいに力を込めた。数秒して、背中に温もりを感じる。
「今まではよく一人でがんばったな、A。でも抱えすぎだ。AはAらしく、前向いてりゃいい」
『私らしく……』
「おう」
川上さんの一言一言にドキドキする。
味方でいてくれる懐の深さ、頼もしさ、安心感。
一挙一動に全身がそわそわするこの感覚を、私は知っている。
「これからはもっと俺を頼ってくれよ？」
そう言って笑う川上さんに私は
『はい！』
と明るく返事をした。
これを不幸中の幸いと、いうのだろうか。
私にはこれからの時間がたっぷりとある。
いつかの未来、このことを笑って語れる日が来たら。
その時、隣に川上さんがいてくれたら。そんなことを考えながら、わたしはこの温もりに甘えて、頬を綻ばせていた。
【川上音二郎ルート・終】
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小崎相良(プロフ) - Koma?さん» お返事遅くなりすみません！ありがとうございます！ (2022年1月22日 18時) (
レス) id: 6783c5a7bd (このIDを非表示/違反報告)
Koma?(プロフ) - ちょーぜつ面白いですね！最近めいこい見始めて最初に出会った作品がこれで良かったです！ (2022年1月16日 11時) (レス) id: 286de14237 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 二酸化酸素さん» ありがとうございます！嬉しいです！ (2021年7月21日 22時) (レス) id: b1e523f101 (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - 本当にゲームをしてるような気分になりました (2021年7月19日 1時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 鈴華さん» 楽しんでいただけたなら幸いです(o´艸`)！こちらこそ閲覧頂きまして、ありがとうございました！ (2020年8月4日 23時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2020年2月23日 10時
