Another:芽衣 ページ12
声に驚いたもののAさんをここで驚かしては意味がない。ゆっくりとそちらへと視線を向ける。
Aさんの目は緩んだ表情のままじっとこちらを見ていた。
「Aさん」
『……？』
「あのですね、私、話を聞いた時……Aさんが帰ってこなかったらどうしようって……不安だったんです……でも私は無力で……」
私にできることをがなくて歯痒かった。
少しでも力になりたいのに、気持ちだけが先走ってしまって。
環境が、体質が邪魔をして動けるのに、動けない。
信じて待つと言うことの難しさを実感した。口で言う事だけなら簡単なのだ。いざ、待つとなるとそわそわしてしまう。一緒に探しに行きたくなる。
鴎外さんや、春草さん、音二郎さんを信じていないわけじゃない。でも秒針が進むのがいつもよりも遅く、遅く感じた。
「でも、帰ってきてくれて嬉しかったです。だから、その、おかえりなさい」
気持ちが届くように丁寧に言葉を紡ぐ。
『…………ただいま』
先ほどまでより少し明るい声で返事が返ってきた。さりげなく距離を詰める。Aさんからの抵抗も拒絶もなかった。
「ギュってしても、良いですか？」
『…………うん』
数秒のためらいのあと、肯定の返事が聞こえた。布団が音を立てず静かに床へと落ちる。少し俯き気味にこちらを見てくるその仕草を見ると年上だと思えなくて、緊張する。
私は恐怖心を与えないよう、優しくゆっくり包み込むように抱きしめた。初めは緊張している様子だったけれど、次第に体から力が抜けていく。安心したのか、最終的にAさんは身体を預けてくれた。
寄り添うようにもたれかかっていることで、体温を近くに感じる。
Aさんがあったかい。
出会って一月も経っていないのに、存在がとても身近に感じる。それはお互いの状況が似ていることが一番の理由で。同じ苦しみを、気持ちを共有する中で、身近に感じるようになったのだろう。
『……あったかい』
ぼそりとAさんが呟いた。その声はとても嬉しそうで、こちらまで嬉しくなる。
「そうです！人はあったかいんです。Aさんを大切に思っている人はあったかいんですよ！あの男たちとは、違いますから！！」
『……うん』
「忘れるのは難しいと思います。ですので、頑張って乗り越えてください。私はAさんの味方です」
私の言葉にAさんの口角が少し上がった気がした。
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小崎相良(プロフ) - Koma?さん» お返事遅くなりすみません！ありがとうございます！ (2022年1月22日 18時) (
レス) id: 6783c5a7bd (このIDを非表示/違反報告)
Koma?(プロフ) - ちょーぜつ面白いですね！最近めいこい見始めて最初に出会った作品がこれで良かったです！ (2022年1月16日 11時) (レス) id: 286de14237 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 二酸化酸素さん» ありがとうございます！嬉しいです！ (2021年7月21日 22時) (レス) id: b1e523f101 (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - 本当にゲームをしてるような気分になりました (2021年7月19日 1時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 鈴華さん» 楽しんでいただけたなら幸いです(o´艸`)！こちらこそ閲覧頂きまして、ありがとうございました！ (2020年8月4日 23時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2020年2月23日 10時
