Another:藤田 ページ2
「……折れた……簪？」
菱田の言葉に泉は何も答えない。
しかし表情が全てを物語っていた。
「……！ここにあったのか？」
「……」
泉は何も答えなかった。
ただ一度、首を縦に振る。
その行動が全てを物語っていた。
「え、なに……泉、それはなに」
「菱田、今すぐ警官たちを呼んでこい。俺たちは先に建物に突入する」
菱田の声にかぶせるように言う。菱田は俺の言葉に戸惑うような声を漏らす。
この男はこの簪が誰のものなのかを知らないのだろう。
「その簪には見覚えがある。まじまじと観察したわけではないので確信ではないが、恐らく娘が先日身につけていたものだ」
「！」
「Aがつけてたってことかよ……」
捲し立てるように早口で言葉を紡ぐ。
「俺は娘だけでも救出する。人買いを捕らえるために警察官らにこの場所を知らせてこい。表には多くの警官らがいたが、此方にはあまりいない。このまま全員で突入すれば逃げられて、同じ惨事を繰り返す可能性があるだろう」
「……大丈夫、なんですか」
震える声で菱田が問う。
「大丈夫かどうかなど関係ない。“助ける”ことが俺の務めだ」
真っ直ぐに菱田に視線を合わせて言う。
その言葉を聞いた菱田はくるりと向きを変え、駆け出した。
泉と共に、その姿を見送る。
警察にはここのことはすぐに伝わるだろう。俺は他の警察が来るまでにここで娘を救い出さなければ。隣にいる泉へと視線を移す。
泉は手元の簪を静かに、じっと見つめていた。
「泉」
「っ！なんだよ」
「お前は娘を保護することだけを考えて動け」
「はあ？」
俺の言葉に不服そうに首を傾げる。
この男が力にならないと判断したわけではない。しかし、俺か泉のどちらかが真っ先に娘の近くに駆けつける必要がある。敵の数も建物の構造もわからないのだから、娘を人質に取られては動けなくなるだろう。それだけは避けねばならない。
「敵は俺が引き受ける。娘が合意していないとなれば縛られている可能性が高い。建物の大きさから考えると、中にいるのは数人だろう。状況にもよるが、見つけ次第お前は娘の元へと走れ。いいな？」
「わ、わかってるよ！」
「行くぞ」
眉を釣り上げて泉が答えた。
その言葉を合図に突入を示唆する。
サーベルに手をかけると、俺は静かに扉を開いた。
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小崎相良(プロフ) - Koma?さん» お返事遅くなりすみません！ありがとうございます！ (2022年1月22日 18時) (
レス) id: 6783c5a7bd (このIDを非表示/違反報告)
Koma?(プロフ) - ちょーぜつ面白いですね！最近めいこい見始めて最初に出会った作品がこれで良かったです！ (2022年1月16日 11時) (レス) id: 286de14237 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 二酸化酸素さん» ありがとうございます！嬉しいです！ (2021年7月21日 22時) (レス) id: b1e523f101 (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - 本当にゲームをしてるような気分になりました (2021年7月19日 1時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - 鈴華さん» 楽しんでいただけたなら幸いです(o´艸`)！こちらこそ閲覧頂きまして、ありがとうございました！ (2020年8月4日 23時) (レス) id: 5536140bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2020年2月23日 10時
