Another:小泉 ページ6
Aサンが来ない。昨日、同じ場所に同じ時間にとの約束をしたのに、姿を見せない。
心配ではあったが、入れ違いになってはいけない。考えているうちに数時間が経ち、私はこの場所を離れられずにいた。
午砲が聞こえ、もう昼かと時間を認識する。周りを見渡すがAサンが現れる様子はなく、大きなため息をついた時だった。
「小泉さん!」
「オゥ!音二郎サン!」
現れたのは川上音二郎サンだった。
右手を上げて手を振りながらこちらへと向かってくる。
「私に何か御用でしょうか?」
「お前A知ってるか?」
「えぇ!えぇ!勿論ですとも!実は待ち合わせをしているのですが、いらっしゃる様子がなくてですねぇ……」
「伝えるのが遅くなってすまねぇ……今日来れなくなっちまったんだ」
そう行ってて困ったようにヘラリと笑う音二郎サン。
彼の言葉を聞いて私は眉間にしわを寄せる。
「……何かあったのでしょうか?」
「あー……体調不良だな。熱が出ちまってよ、来させるわけにはいかねぇんだ。今は置屋で安静にしてる。で、俺がそのことを伝えに来たんだよ」
「それはそれは、ありがとうございます。しかし、熱ですか……さぞお辛いでしょう……」
「森さんが言うには風邪の症状とは少し違うみたいでよ、疲れやストレスからの熱だろうってさ」
「そうですか……」
疲れが原因なら、ここ数日、聞き込みという名目で連れ回していた自分にも関係あるのではないかと思う。私は女性の体力への配慮をしていなかった。
「では!手土産を持ってお見舞いに参ります!」
「え、あ、ちょ」
有言実行、私は手土産を買うために歩き出した。
何が良いものか、そう悩んでいると藤田サンを見かけた。
いつもの軍服ではなく着物を着ている。
「藤田サンではないですか!今日はお休みなのですね!」
私の声に藤田サンが振り向く。
「お買い物ですか?でしたら……あぁ!藤田サン!」
「……なんだ」
「病気の方への手土産で何か良いものを知りませんか?」
「……なぜ俺に聞く」
「藤田サンも知っている方だからですよ!Aサンです!覚えていらっしゃいませんか?」
「……?あの娘がどうかしたのか」
「Aサンが熱を出されたそうなのです!お見舞いに何か持っていこうと思うのですが……魂依ですし、何か骨董品でもお届けするべきでしょうか?」
善は急げ、私は骨董品店へと足を向けた。
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小崎相良(プロフ) - 閃光のまりあんぬさん» コメントありがとうございます!不定期な更新ですみません(>_<)藤田さんカッコいいですよね!少し不器用な優しさにキュンときます(o´艸`) (2020年2月20日 9時) (レス) id: b334f4b37a (このIDを非表示/違反報告)
閃光のまりあんぬ - とっても面白いです!! 更新頑張ってください! 楽しみにしてます☆ ちなみに私は藤田さんファンです…! (2020年2月19日 23時) (レス) id: 68c769878e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年8月13日 19時