Another:岩崎 ページ46
事の発端は違和感を感じた事だった。なんとなく、前回会った時よりもAさんの反応が鈍いような、ぼんやりとしているような感覚。
しかし、違和感は感じたものの理由は分からず。
そのままさりげなく観察すると、化粧で分かりにくいものの、頬が赤らんでいることに気付く。呼吸が浅そうだということも。
会話を続けながら観察し、体調が万全でないのだと確信する。
そして、Aさん自身が気づいていない様子だということも。
「おすすめはチョコレエトですが……あのAさん?」
『はい?』
私の言葉に視線を合わせるAさん。こちらを見上げるように見つめ、数回瞬きをして首を傾げる。わからない、とでも言うように。
「大丈夫ですか?」
「先日よりも顔色が悪い気がしますが」
『そうでしょうか?……大丈夫だと……思いますけど』
「……失礼」
一言断りを入れ額に手を当てると、体温の高さを感じる。私の手が冷えている可能性も考えたが、そもそも室内にいて季節も夏。加えて私は酒を飲んでいたのだから、手先が冷えているわけがない。つまり、お酒の入っている自分よりも彼女の額の温度が高いということだ。
Aさんは多少の体の暑さを感じていたのか、額に手を当てて冷たさを感じるとほうっ、と息を吐く。
私は医者ではない。しかし、体温の異常が素人にも分かるほど明白では、このままにしておくわけにはいかない。
「ここにいて下さい」
Aさんに一声かけて、私は席を立つ。
向かったのは森さんの所。店前で会ったので、店内にいることを知っていたから。何人かの芸者に声をかけて居場所を聞き、そちらへと向かう。
芸者の1人の方に森さんを廊下まで呼んでもらうように頼んだ。程なくして、森さんが現れる。
「こんばんは、森さん」
「岩崎くんではないか!お客人とは君のことだったのかい?」
「はい。お力添えを願いたくて伺いました。来ていただけますか?」
「それは構わないが……ここでは話せないのかい?」
「いえ、実は知り合いの体調が悪いようなので、見ていただけたらと思いまして」
「ふむ、それはいけない。同行しようか」
「ありがとうございます」
.
105人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます!私も芽衣ちゃん好きです!こちらこそ、これからも宜しくお願いします! (2019年6月30日 20時) (レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです!めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです!これからも更新を楽しみに待ってます! (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年6月15日 0時