第卌壱話_再会 ページ44
「こんばんは、Aさん」
声を聞いて顔を上げる。視界に入ったのは淡い寒色のふわりとした髪と青色の着物。
先日会った時はスーツを着ていたので一瞬迷ったが、彼は岩崎桃介さんだ。音奴さんが覚えておいて損はないと、言っていた人だったと思う。
……穏やかそうに見えるが裏番長か何かなのだろうか?
『こんばんは……えっと、岩崎さん?』
「はい。前回は、名乗りもせずすみません。私は岩崎桃介、と言います」
『岩崎さんは何故私のご指名を?』
「?……また来ます、とお伝えしたと思いますが?」
さも「伝えたでしょ?聞いてなかったの?」とでも言うように首をかしげる岩崎さん。
社交辞令で行っているのだと思っていたが、本気だったらしい。
『本当に来てくださるとは思わなかったもので……お忙しい方だと伺いましたし……』
「飲みに来る時間くらいはありますよ。私的な時間も取らなければ、体調を崩してしまいますし」
なんだか、岩崎さんは休むことも仕事!みたいな感覚で話している気がした。
複雑に思い、岩崎さんの顔をじっと見つめる。しかし岩崎さんに気にする様子はなく、それどころか視線が合うとにこりと微笑まれてしまった。
……ここに来ることが彼にとっての休息になればいい。そう思いながら微笑み返し、お酌をする。
『普段はどちらで過ごされているんですか?』
「そうですね…新橋あたりか慶応義塾の研究室ですね。新橋では株取引の情報収集をしたり株取引の接待を行なったり……」
『慶応義塾……?あの、お仕事ではなくて……休日にどちらで休息をされるのかなと伺ったつもりだったのですが……』
「休日ですか?研究室で電気の研究をしています」
『……?』
「?」
あれ?言葉通じてないのかな?なんかおかしい気がするのは私だけ?
そう思い改めて考えてみる。
いや、私の感覚はおかしくないと思う。電気の研究は休日に行うものではない気がする。仕事ならわかるが……休日に進めるようなものではないんじゃ?岩崎さんの感覚が少し(?)ズレているのだろう。
明治時代で出会う人たちが個性豊かすぎて、キャパオーバーしそうだ。
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小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます!私も芽衣ちゃん好きです!こちらこそ、これからも宜しくお願いします! (2019年6月30日 20時) (レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです!めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです!これからも更新を楽しみに待ってます! (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年6月15日 0時