第卅壱話_偶然 ページ34
街中をフラフラしていると見覚えのある姿。若草色の髪を1つに束ねた彼は、こちらに向かって歩いてきた。向こうもこちらに気づいた様子で視線が合う。
『おはようございます、菱田さん』
「……おはよう」
菱田さんは足を止めて挨拶を返してくれる。手に小さな紙袋を持っているところから見て、買い物の帰りだろう。
『お買い物ですか?』
首を傾げると、菱田さんは表情を変えずに「うん」と言った。
「画材の買い出し。君はこんなところで何してるの」
『……人探しです』
「人探し?……君、誰を探してるの?」
『その、知り合いを……』
「へぇ。知り合いか……君の友人?」
『……いえ』
「え、違うの?それなら親戚とか」
『……』
「え……君、まさか関係のわからない人を探してるの……」
このパターンはダメだ。
菱田さんの眉間のシワが段々と深くなる。
その表情で呆れられているのをなんとなく感じた。
「俺には意味がわからないけど。そんな人、何の為に探してるの」
『……』
何故なのかという疑問はと帰ってくるだろうことがわかっていた。正直に答えたことに後悔する。
当然菱田さんは私が黙り込んだところを見て眉を潜め、首を傾げた。
「何?理由も言えないような人を探してるの?それはそれでどうかと思うけど」
『そういうわけでは……』
自然と声が小さくなる。見兼ねた菱田さんが更に口を開く。
「なら話せばいいでしょ……人探しするなら目が多いに越したことないだろうし、俺の知り合いかもしれない」
『そう……ですけど………』
「……」
菱田さんはじっとこちらを見つめている。菱田さんとの付き合いは浅いが、今までの会話の様子から何となく追求してきそうな気がした。先を急ぐ様子もない。
もともと見られることがあまり好きではないので、この状況が個人的にはとても辛い。
そして、とても気まずい。
『……わかりました』
視線に耐えきれなくなった私は菱田さんの手首を掴む。内容が内容なだけに、この場所で話すには周りに人が多すぎる。手首を掴んだことで、菱田さんが「え、ちょっと」と戸惑う声を出したが気にしない。
『……来てください』
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小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます!私も芽衣ちゃん好きです!こちらこそ、これからも宜しくお願いします! (2019年6月30日 20時) (レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです!めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです!これからも更新を楽しみに待ってます! (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年6月15日 0時