第卅話_五日目 ページ33
「…………ーい、A?朝だよ、起きな」
『……ぅ』
ゆさゆさと揺さぶられて目が醒める。朝日の眩しさに目を細めたのだが、二度寝と勘違いされたらしい。起こし主は更に声をかけてくる。
「そろそろ起きないと朝餉が冷めちまうよ?ほら、起きなったら!」
『……ぉはようございます……』
「おはよう、A」
声の主である音奴さんはにこりと笑って挨拶を返してくれる。相変わらず、朝から完璧なメイクだ。
最も、単に私が起きる時間が遅すぎるだけかもしれないが。
寝間着を着替えて音奴さんと一緒に朝餉を食べる。
「そういえばA、あんた昨日岩崎の旦那の相手したんだって?」
『……岩崎?』
「え?覚えてないのかい?!宴会の後残って呑んでた旦那だよ!」
音奴さんがそう言って目を見開く。こう、ふわっとした髪型の!スーツを着た男だよ!と容姿の詳細を教えてくれた。そこまで聞いて、思い返すと思い当たる人物が浮かぶ。
『あぁ、車の方ですね?はい。少しの間お話しました。穏やかで優しい方でしたよ?またいらっしゃるとおっしゃってましたし』
「!」
『彼、岩崎さんっていうんですね』
「えぇ?!あんた、名前知らなかったのかい?実業家の岩崎桃介。有名なお人だからね、覚えておいて損はないよ」
驚いたように目を見開いた音奴さんはニヤッと妖艶に笑う。それはそれは美しく。
音奴さんの話では、彼は慶應義塾で電気の研究をしているのだそう。現代っ子の自分としては是非、この時代にもっと電気を普及させて欲しいところだ。
明治時代での生活は少々不便すぎる。
私が便利な道具があることに“慣れてしまっている” と言うこともあるだろうけれど。
朝食を食べ終えた後、仕事の時間まで散策に出かける。ナイルさんを探してフラフラと歩き回るが、やはり見つからない。
時間帯の問題なのか、場所の問題なのか、タイミングが合っていないのか……この数日で神楽坂付近の地理に詳しくなった気がする。
ナイルさん、どこですか!
少しイラっとした。
.
105人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます!私も芽衣ちゃん好きです!こちらこそ、これからも宜しくお願いします! (2019年6月30日 20時) (レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです!めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです!これからも更新を楽しみに待ってます! (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年6月15日 0時