第廿玖話＿歓談 ページ32
『お忙しいんですね』
「それ程ですよ。ここでお酒をゆっくり飲む時間はありますから」
『お酒お好きなんですか？』
「付き合いで飲む程度ですね。……失礼ですがお名前は？」
『Aです。AAと申します』
「Aさんはお酒はよく飲まれるんですか？」
『嗜む程度です。そんなに強くないので……飲む事自体は嫌いではないんですけどね』
「成る程」
それからポツリポツリと会話を交わした。
内容はただの世間話。食べ物の話とか彼の体験談とか。 たわいもない話をして過ごしているとあっという間に時間は過ぎていく。
「洋食にも和食にも良いところがありますから難しいでしょう」
『そうですね、決められません』
「では、Aさんのお好みは？」
『私ですか？』
「はい。魚と肉ではどちらがお好みですか？」
『…………お肉ですね』
「お肉ですか」
そう言って彼は目を細めてクスクスと上品に笑う。その笑顔はとても楽しそうで、なんだか釣られてこちらも笑ってしまった。
2人でクスクスと笑い合う。
長く感じていた時間は会話をして打ち解けたことで途端に短く感じるようになり、あっという間に、一本分の時間となる。
「今日はありがとうございました」
『いえいえ！こちらこそありがとうございました。寛いでいただけましたか？』
「はい。とても有意義な時間を過ごすことができました。Aさんはとても聞き上手でいらっしゃる」
はじめに見た営業スマイルではない頬笑み。それを見て自分の拙い接客で、この方が楽しむことができたのだと実感して嬉しくなる。
聞き上手というほど話術に長けているのではなく、単なる人見知りで積極的に会話をすることが苦手なだけだけれど。この方にはそれがとても心地よかったらしい。
『お褒めいただき光栄です』
「また来ます」
『え、あ、ありがとうございます！今後とも当店をご贔屓にお願いしますね』
「ええ……あぁ、そこの車は明日、取りに来ます」
彼は停めてあった車を指差してそう告げる。あれ？車だ。俥ではない車。久しぶりに見た。
この時代からあるとは知っていたが、見たことがなかった。レトロなデザインに趣を感じる。
『わかりました』と返し、見送ると同時に気がつく。
『あ、名前聞いてない…あの人誰？』
名前を聞き忘れてしまった。
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小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます！私も芽衣ちゃん好きです！こちらこそ、これからも宜しくお願いします！ (2019年6月30日 20時) (
レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです！めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです！これからも更新を楽しみに待ってます！ (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年6月15日 0時
