第廿陸話_四日目 ページ29
その翌日、宴会が七時からの予約ということでフラフラと街中の散策へ。大通りではそれらしき人影は見当たらず、細道も確認しようと路地に入った際、見たことのある人と目が合った。
『あ』
「え?あ、あんた……川上の所の」
『かわかみ?AAです。あなたはウサギを連れてた作家の方ですよね』
「なにその覚え方……それと、作家じゃなくて僕は書生なんだけど」
『覚えておきます、えっと……』
「客の名前忘れたの?!……あんた、できる女に見えて以外と鈍臭いよね!ちゃんと覚えないと、そのうち客に叱られるよ?……ま、忘れたのが寛大な僕のことでよかったね」
『す、すみません……』
自己紹介された記憶なんかないんだけどなぁ……なんて思いながら、彼の話を聞く。
彼は“泉鏡花さん”というらしい。
自己紹介しながらもなんだかブツブツと怒っている様子の泉さん。
彼の言葉を右から左へとぼんやりと受け流しつつ聞く。なんだか小姑のような人だ。
『あの、泉さん』
「うぇ、なにその呼び方……」
『え?えと、じゃあ鏡花くん』
「!あんた以外といいやつじゃんか!」
……名前で呼んだだけでいい人扱いされた……本当にわけがわからない。
先ほどまで“鈍い” とか“鈍臭い” とかずっと言ってたのに……。彼にとっての判断基準はなんなのだろう。訳がわからずキョトンとしていると、鏡花くんは愚痴るかのように語り出す。
「鏡花ちゃん鏡花ちゃんってさ……男に対してちゃん付けしてくるなんて、ほんと、わけがわからないよね……川上なんか会う度に大声で呼ぶし、触るなって言ってるのに距離詰めてくるし!大体……」
そこから川上さんとやらへの愚痴大会が始まる。愚痴りつつ、合間合間にフォローを入れているのは性分なのだろうか。なんというか、俗に言うツンデレ?と言うやつなのだと思う。名前の呼び方は間違いなく、川上さんとやらが基準になっているようだけども。
そして話を聞いている限り、鏡花くんは潔癖症のようだ。触られるのが嫌だとかバイ菌がどうとか言っている。そんなこと……と思うが、彼にとってそこはとても大きな問題らしい。複雑な気分ではあるが、一定の距離を保つ必要がありそうな分類の人だ。
「そういえばあんた何してたの?」
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小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます!私も芽衣ちゃん好きです!こちらこそ、これからも宜しくお願いします! (2019年6月30日 20時) (レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです!めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです!これからも更新を楽しみに待ってます! (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年6月15日 0時