第拾玖話_三日目 ページ22
朝日が昇る頃。人の気配を感じて目が覚めた。
古い日本家屋にあるような天井、窓から差し込む太陽。
結局眠ったところで、昨日も今日も変化はなかった。
……きっとこれからもないだろう。
来た時は眠りに落ちて辿り着いたのに、今は眠った場所で目覚めるだけ。朝だというのになんだか気持ちが沈んだ。
今日は宴会がキャンセルになったそうで、1日お休みをいただくことになった。突然の休暇に驚いたが、電話のないこの時代にはよくあることらしい。
丸一日の休暇。
何をしようか悩んで、私は芽衣さんに会いに行くことにした。
その理由は1つ。彼女も違う時間軸から来た人物だからだ。帰るための情報を持っているのかなんてわからないけれど。
それでも、頼れるのは彼女だけ。
鴎外さんの家に居候しているはずなので、会いに行くことにした。
とりあえず家には辿り着いた。着いたが、どうしたら良いのかわからず、家の前を徘徊する。インターホンとかないのかな……ないよね、電気ないもんね……。
うろうろしていると「あ」という声がした。声のした方に視線を移す。そこには初日に乗った馬車にいた髪の長い青年。痴漢から助けてくれた彼だ。
名前……なんだっけ……?
「あんた、この前の」
『……AAです。あの、芽衣さんはいらっしゃいますか?』
「あの子なら居ないよ」
『え』
「……今買い物に行ってるんだ。まぁ、すぐに帰って来ると思うけど」
『そうですか……』
「……」
『……』
気まずい。すごく気まずい。
どうしよう……自分も人見知りだけれどこの人もそうなのかもしれない。
お互い声を出さず数分。
出直した方が、迷惑にならないのかな?そう考えていると「ねぇ」と声をかけられた。
『!はいっ……?』
「この後予定とかあるの?」
『…ありません』
「……じゃあ、中入るからついてきて」
そう言ってくるりと向きを変え、スタスタと歩いていく。
私は慌てて彼の後を追いかけた。
鴎外さんの家は外観も内装も洋風だ。
外観を見て大きな家だとは感じていたが、中の装飾もすごかった。一般家庭で使うには豪華なデザインのテーブルに椅子、照明。繊細な模様の織り込まれたカーペットがこの家の裕福さを象徴している。
和風の建物が多いこの時代の最先端なのだと感心すると同時に、そんな人のところに誘われていたのかと思った。
「ここ、座ってて」
彼はそう一声掛けて部屋を出て行ってしまった。
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小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます!私も芽衣ちゃん好きです!こちらこそ、これからも宜しくお願いします! (2019年6月30日 20時) (レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです!めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです!これからも更新を楽しみに待ってます! (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年6月15日 0時