第拾壱話＿不安 ページ13
芽衣さんが言うには、私はタイムスリップをしてしまったらしい。
現在いる此処は明治時代。西洋の文化が広まりつつある日本、だ。
自動車もあるが、馬車や俥と呼ばれる人力車が主流。駅もあるにはあるが、走っているのは電車ではなく機関車だと言う。
この時代では着物を着ることが当たり前で、肌の露出は良くないこと、だそう。制服の膝上スカートですら「破廉恥」「みっともない」と思われるらしく、芽衣さんは制服に関して色々な人に散々言われたという。
話を聞けば聞くほど絶望を感じる。タイムスリップなんてどうしたら良いのだろうか。
10年やそこらならまだしも、100年以上前では家族だって生まれていないだろうから頼れない。先ほどの蕎麦屋での経験から持っているお金も役に立ちそうにない。というか、多分使えない。そもそもの貨幣のデザインも価値も違うのだから、お札なんてただの紙切れだ。
今この場にいることで食べ物にありつけているのが、不幸中の幸いというやつだろう。
ぼんやりと部屋の中を見つめる。
芽衣さんは今は鴎外さんに呼ばれて彼の元に行ってしまった。
賑やかな雰囲気の中に上手く入れない上、服装でも浮いている私。善意で此処へ連れてきてもらったが、邪魔になっている気がしてなんだか複雑な気分だ。
「あんた、変わった格好してるな？」
『！』
話しかけてきたのは中年のおじさんだった。やはり服装が珍しいのか、じろじろと上から下まで舐め回すように見られる。
何度されても見られるのは恥ずかしい。
ふいっと目をそらすとその隙をついてか、男性は隣に座った。訳がわからず体が硬直する。話しかけるべきか戸惑っていると、するり、と脇腹に腕を回された。その手は腰を抱き寄せるようにすり、すりと腰を撫でている。
『？！』
「いい腰してるなぁ、お嬢さん」
『あの』
「痩せすぎず、太すぎずでおまけに柔らかい。俺の好みの触り心地だよ」
『……っ』
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます！私も芽衣ちゃん好きです！こちらこそ、これからも宜しくお願いします！ (2019年6月30日 20時) (
レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです！めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです！これからも更新を楽しみに待ってます！ (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年6月15日 0時
