第81話:方法 ページ2
『え、待ってください、どう言うことですか？』
「A君にはそんな力は無いよ！この子の個性は“増やす” だけだ」
勝さんの言葉が理解できない。
それは八木さんも同じようで、眉間に皺を寄せていた。
「そう言う意味じゃ無いよ。いいかい？ちゃんと説明するから、よく聞いてね」
そう言って目線を合わせる勝さん。
彼の視線の真剣さに思わず身を硬くする。
「小屋の中には1冊の本と小さなメモ用紙があるそうだよ。その本は世界中の生きている人たちの名前の名簿なんだって。その名簿の中から1人を選び、名前を書けばその人が次に僕たちの世界に導かれる。で、名前を書いたら君は帰る資格を得る…この意味わかるかな」
誰かの名前を書いて自分は元の世界に帰る。
…名前を書かれた人は、元の世界と切り離されこの世界に来る…？
自分が帰るためには他の誰かをこの世界に呼び込む必要があると言うことだ。
見ず知らずの名前を書かれた“誰か”は自分がこの世界に来た時のように、ここに迷い込むのだろう。
……元の世界には帰るためには。
『身代わりを立てる必要がある…ということですか』
「そういうこと。大和くんもものすごく悩んでたよ…誰かを犠牲にしてまでってね。でも彼には家庭があった。奥さんと、子供がいた。だから名前を書くことにしたと。そう言っていたよ。酷な話だけど……Aさんは選択しなければならない」
言葉が出てこない。
帰りたいと思ったことは数知れず。今でも思うけれど、他の人に身代わりになってもらって元の世界に戻るとなると…決断はできない。
勝さんの横で爆豪くんが俯いている。
……拳を握りしめているところから、先に聞いていたことがわかった。
横を見れば八木さんも眉を下げ、床を見つめている。
沈黙が続く。
誰も口を開けない。
身代わりを立てるなんて…どこかの誰かなら苦しんでもいいなんて。
……………割り切れない自分がいた。
頬を拭われる感覚がして、横を向くとハンカチを持った八木さんの姿。
知らないうちに泣いていたらしい。
「これが、僕の知っていることの全て、だよ。話を聞いて、どうするかはAさんが決めるんだ。帰りたいのであれば、方法は１つだからね」
『………………はい』
涙を堪えつつ答えたが、
声の震えは止められなかった。
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小崎相良(プロフ) - 楓さん» コメントありがとうございます！こちらこそ、読んでくださりありがとうございました。お気持ちがとても嬉しいです(っ´ω`c)また何か思いつきましたら執筆致しますね！P.S楓さん、呼吸は大事ですよっΣ（・□・；） (2019年6月1日 18時) (
レス) id: fd7aceb583 (このIDを非表示/違反報告)
楓(プロフ) - 完結おめでとうございます！！長い間お疲れ様でした！小崎様の小説の書き方がとても好きで、とても上手くていつも物語に引き込まれて呼吸をつい忘れてしまうほどです。この小説も何度も読み返しました！小崎様の益々のご活躍とご多幸を心からお祈りしております！ (2019年6月1日 15時) (レス) id: 6bd4d01d86 (このIDを非表示/違反報告)
小崎相良(プロフ) - ゆきのさん» いえいえ！少し落ち込みましたが、付け続けて恥をさらす事態にならず良かったと、前向きに受け止めます。気を引き締めますね！ゆきのさんのお気持ちを知れた事がとても嬉しいです。お気遣いいただきありがとうございます！ (2019年5月23日 18時) (レス) id: fd7aceb583 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - あまり数字を気に病まず、気楽に活動してくださいね。さて、物語は佳境ですね。元の世界へ戻るには、自分と同じように、どこかの誰かを犠牲にしなければならない…夢主ちゃんはどんな選択をするのか。次回更新も楽しみに待ってます(*´▽｀)ﾉ(長々とすみません汗) (2019年5月23日 16時) (レス) id: ea954c48ab (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの(プロフ) - オリフラが理由で低評価が入ってしまうと少し残念ですよね。作品の評価ではなく、行動のミスに対しての評価なので…。気休めですが10点の評価入れておきました。前作のお気に入り登録者数からしても次第に点数は上がっていくと思うので、(→) (2019年5月23日 16時) (レス) id: ea954c48ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年5月23日 9時
