名取の隠し事《完結》 (ページ45)

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名取side

藍沢「緊急事態だったからな。時間かけて登るのも今のお前にはしんどいだけだろ。」

そう言いながらどこから持ってきたのか、藍沢先生は冷えピタを俺のおでこに貼った

...もしかしてなくても俺を看病するために家に？

だとしたら藍沢先生は...

名取「...はぁ...」

とんだお節介だ

藍沢「なんだ、なにか文句があるのか。」

名取「...男にやることがいちいちイケメンすぎるんだよ...」(ボソッ

《あれ》は嫌だったといえば嫌だった

男である以上、無駄なプライドがある俺は自分にはできない男前行動をされると悔しくて腹が立つ

藍沢「？なんだ。」

名取「...なんでもないです。」

あーあ、部屋もキレーだしさぁ...

ほんと嫌になるわこの人

名取「...ん、けほっこほっ...」

藍沢「悪い話しすぎたな。水飲んで寝てろ。なんか晩御飯作ってくる。」

ぽん、とベッドの横にある机に水を置いて、藍沢先生はその場を離れようとした

...けど

名取「...いや、だ...ひと、り、ぃやだ...」

隣に誰かがいないのが急に怖くなって、いつの間にか藍沢先生の服の裾を掴んで、泣きながらそう言っていた

藍沢「あ、えっと...名取？すぐ戻ってくるから...」

名取「ぃやだぁ...！ぐすっ、あい、ざわせんせ...行かないでよぉ...」

...こんなことするのはみっともないし、藍沢先生に迷惑を掛けるだけだ

わかってる、分かってるけど、口から1度でてしまったが故に、止まらなくなってしまった

...もういいか

名取「あいざわせんせい〜っ...！！」

藍沢「わ、わかった。わかったから泣くな！じゃあ一緒に行くか？」

コク

名取「...ぃきます。」

藍沢「じゃあ俺の腕に掴まれ。」

ご飯作ってもらって、食べさせてもらって、お風呂は...さすがに自分で入った

寝る時も頭を撫でて貰いながら眠りについた...とはいかず、ポロッと口から出してしまった言葉で藍沢先生の動きを止めてしまった

藍沢「...え？」

名取「...不安なんですよ。記憶が俺をいつも邪魔する。あいつらはいない。父さんに何か言われることもされることももう無いって分かってるのに...」

俺...不安なんです。

ぽつりと呟いた言葉は果たして意味があるのかと言われれば...それは分からない

けど、今どうしようもなく言葉として伝えたかった

誰でもない、あの時1番支えてくれてたこの人に

名取「どう、したらいいですか...」

顔を背けてる俺は藍沢先生の顔が見えなかった