名取の隠し事《完結》 (ページ43)

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名取side

あの時、俺が殴られていたあの時、俺が見ていた景色全てが頭の記憶から掘り起こされる

それはカタチとなって俺を襲い、ひたすら俺がそいつらから逃げる夢

捕まってまた殴られそうになった所で目を開けると、そこは何の変哲もない病室だった

汗だくで、前髪が額にくっついて邪魔くさい

その上走ってもないのに息切れをいていて苦しい

名取「...はぁ...最悪。なんで今更...」

横にあった窓を見るともう真っ暗で、月が煌々と光っている

月は真夜中では絶対的な権力を持っていると言っても過言じゃない

昔は何回か「あの月みたいになりたい」とか言った覚えがある

...あんなキラキラ光れるわけないのに

ついでに見えた点滴がそろそろ終わりそうだったのでナースコールを押そうと手を伸ばす...が、それが出来なかった

手に違和感を感じて、そっちを振り向くと...

名取「...え、あいざわ、先生...？」

藍沢先生は俺の手を握って、椅子の上で眠っていた

『なんでここにいるんだ？』

って疑問より、

『なんでてなんか握ってんだ？』

と思った

とりあえず起きてもらわないと、点滴してる方でナースコール押すのはちょっと無理だ

早く家に帰りたいし...

名取「藍沢先生？ちょっと起きてください、藍沢先生！」

しばらく声をかけていると、藍沢先生の目がゆっくりと開く

藍沢「...ん？あぁ、寝てたのか...」

名取「そうですよ全く...あの、もう点滴終わるんで抜いてもらってもいいですか？」

藍沢「...で、そのあとどうするんだ。」

名取「後...？いや、家に帰りますけど。」

藍沢先生が何故こんな質問をするのかわからなかったからそう答えると、藍沢先生は呆れたような顔をして俺を見た

藍沢「お前あれから丸2日も寝てたんだぞ。」

名取「ふ、2日！？」

...俺そんなに寝てたのか...

藍沢「お前何回40度超えれば気が済むんだと思ったほど、体温も安定してなかった。下がったら上がって下がったら上がって...そんな体でよく仕事出来てたもんだな。たってるだけでも奇跡だっていうのに...」

名取「す、すみません...」

藍沢「謝らなくていい、俺が聞きたいのはなんで体調なり心が不調だってことを言わなかったかだ。」

そんなのめんどくさかったから

...なんて嘘ついてもこの人には分かっちゃうんだろうな

黙っていると

藍沢「...ま、終わったことだ。疲れただろ。もう寝ろ。」

そう言って藍沢先生は俺の頭を撫でた