第86話 ページ39
主人公side
「男前が、怪我で更に男前になったんじゃない？」
そう笑うのは、元凶である西。
「……お前もな」
屋上でフェンスに背中を預けて煙草を咥えていると、昨日俺が付けた傷の他に別の傷を増やした西がへらへら笑って近付いてきた。
西からいつも鳴っている通知音は、今日はない。
静かな屋上には、俺が手にしているジッポがカチンと音を立てるだけだった。
「つか、お前誰にやられたんだよ、ソレ」
「これ？」
戯けながら肩から吊るされた腕を小さくあげた西は「乙女ちゃん」と、腫れた頬を掻いていた。
「Aからの報復じゃなく、君の片割れから制裁を受けちゃってさ。……まぁ、腕一本なら安いものかな？」
ただ利き腕折るって容赦ないよね、そう笑う西。
「そういえば俺、Aにはボコボコにされると思ってたんだけど？」
「……最初は病院送りにする予定だった。けど気が変わった」
「へぇ。それはなんで？」
不思議そうに首を傾げる西を横目に、煙草に火を付ける。
吸い込んで煙草を燃やせば、肺が煙で満たされた。
独特の匂いを持った紫煙を吐き出して「桜乃ちゃんが堕ちてきたから」と笑って見せる。
西side
「寧ろ感謝してる」
そう笑ったA。
紫煙越しに見えたその笑顔は、この学校に君臨する女王様が見せる笑みと同じ_____……いや、彼女よりゾクっとする。
「は、……ははっ」
「お前の計画が奴に奪われたお陰で、桜乃ちゃんは俺に縋るようになった」
ドロっとした、そんな感情がAの黒い瞳に渦巻いていて、俺は自身のしでかしたことに対して渇いた笑い声をあげるしか出来なかった。
似ている。
女王である東 乙女が、正義感の塊である如月という女生徒を玩具にすると目を付けた際の笑顔に。
彼女が、自身に楯突いた人間に見せる笑顔に。
瞳に、声の抑揚に、そして雰囲気が_________。
「何が起きても、今回と同じように解決できるんだ」
どうやら、俺の計画がきっかけで、サクノちゃんという少女の逃げ道を絶ってしまったようだ。
「面白そうだよな」
「……ああ。俺には真似出来ないけど」
Aの本当の姿を目の当たりにして、心から思う。
ご愁傷様、まだ見ぬ少女サクノちゃん。
今回のことがなければ、身なりと性格が派手に変われば離れられたことだろう。
「程々って、言葉知ってる？」
その問いに、Aは笑みを浮かべるだけだった。
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バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (
レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか？ (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！ (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バンビ | 作成日時：2020年9月4日 12時
