第80話 (過度な表現あり。読む際ご注意ください) ページ33
桜乃side
私は咄嗟に、離れようと後ろに仰け反った。
「駄目だろ？」
けれど掴まれたままの髪を更に引かれ、離れたはずなのに、また顔が近付いて離れられない。
どうしよう、そう思った瞬間。
その人は私の唇に噛み付いてきたのだ。
「！！？」
噛み付いたかと思えば、ざらりと唇を舐められる。
離れようと暴れても、私を捕まえる力が強くて離してくれない。
嫌、嫌だ。やめてよ。離して。
そう抵抗している間にも、ぬるりとした何かの感触と苦味が、口の中に広がった。
「っ、んぅ！？」
どれくらい経っただろうか。
ほんの一瞬にも感じたし、一分程の長い時間にも感じられた。
口の中を貪る様な行為から解放されると、その人の口と私の口からはつぅっと一本の糸が引いていて、私は一体何をされたのだろうと呆然と目を見開くことしか出来ずに立たされている。
「いいな。東の趣味は意外と良いのかもしれない。こんな可愛い反応してくれて欲しくなった」
パッと、掴まれていた腕と髪を離され、私はそのままペタリと座り込む。
今、私は……何を、されたの？
私は放心状態のまま、ゆっくりとAさんの方へと振り返る。振り返った先の彼は、真っ黒な目を大きく見開いていて、唖然とした表情を浮かべて立っていた。
「……い、やぁ……っふぇ……」
私の、細い声がやけに大きく聞こえた。
そして、静かだった工場内にゲラゲラとした幾つもの笑い声が響く。
「あーぁ、泣いちゃった」
そんな声を封切りに、ゲラゲラと笑う声が響く騒然としだした工場内に「流石の東くんも泣いちゃうんじゃねぇか！？」と声を上げた人が、Aさんの肩に手を置いた。
そして、Aさんの手がその手に重ねられた瞬間_________バキンッ。
そんな音が響いた。
耳に嫌な感じに残るその音は、まるで何かが折れるような音で_______。
「……え？」
「ぎ、ぎぃぁぁぁぁぁッ！！！！！」
誰かの驚きの声が上がった瞬間だ、劈くような悲鳴が上がる。
「痛ぇッ！！！……ぐぅぅ、痛ぇよぉ！！」
悲鳴の主は、普通であれば曲がらない方向に曲がった四本の指を見つめて、Aさんの横に膝を折って喚いていた。
悲鳴を上げ、痛みで背を丸くする人の腹に彼の足が当たる。
そして鈍い音と共に人の体が持ち上がり、転がったのだ。
その鈍い音の中にも、バキンッと、何かが折れるような音が聞こえた気がした。
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バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (
レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか？ (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！ (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バンビ | 作成日時：2020年9月4日 12時
