[d!]紫煙の感覚を知っている。 (ページ2)

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そんな酷い有様のまま、新しい春が来た。まだ期待に満ち溢れていた1年前の面影はどこにもない。
メンタルよわよわの私は、早くも会社に行くことが苦痛になっていた。
でも、私は運命の出会いをした。これが運命でないとしたら、私は余程幸せな生活を送っている。
辛い環境の中頑張れる理由になった彼には感謝しかない。
初めてできた後輩。塩戸平和さん。
私は新人教育を任された。今となって考えても、何故まだ未熟な私に任されたのかよく分からない。

「えと…よ、よろしくお願いしますね。
あ、私はAAって言います。私もまだ未熟なので上手く教えられないかもしれませんが、分からないことがあったら聞いてくださいね」
「よろしくお願いします。…A先輩って、誰にでも敬語使うんですか？」
「い、いえ…そんなことは…」
「じゃあ俺には使わなくて良いですよ。後輩ですし。
俺のことは気軽にショッピって呼んでください」
「そう…かな。じ、じゃあしょっぴくん、よろしくね」

ふわっ、という効果音が似合いそうな笑顔で言われた。
すらすらと言い退けるしょっぴくんはすごい。初対面の人とは特に上手く喋れなくて吃ってばかりの私とは違う。
きっと有能になるだろうなぁ、としょっぴくんの将来に希望を抱きながら、最初の仕事ついて説明した。

「先輩って教えるの上手ですね」
「えっ…そんなことないよ。しょっぴくんの飲み込みが早いんだよ。
しょっぴくんはすごいねぇ」

偶に褒めてくれるしょっぴくん。
全然そんなことないのに言えるんだから、きっとしょっぴくんは良いお父さんとお母さんを持っている。
…あ、私のお父さんとお母さんが悪いって言ってるんじゃ無くて。優しいし平等だし。頭良いし。…なんでこんな私が生まれてきちゃったんだろう。

そんな自己嫌悪に陥っていたものだから、しょっぴくんが恥ずかしそうに頬を掻いているのは見えなかった。