144話 「友達ごっこ」 ページ21
何事もないまま、と言っても、まわりからのくすくす笑いや嘲笑、ぼそぼそと聞こえてくる悪口が絶えることはなかったが。
そのままAの一日が終わろうとしていた。
Aが師匠の元へ戻ろうと鞄を持ったとき。
「ねえ、碓井Aちゃん、だよね？」
頭のお団子が目立つひとりの女の子がAに話しかけてきた。
A『そうだけど…何？』
「ちょっと来て」
彼女はAの腕を掴み、人気のない教室へ連れ込んだ。
A『ちょ、ちょっと何急に！というか、あなたは』
「私は小樽シオナ。ちょっと前に転校してきたんだ…」
「シオナ」と名乗ったその子は、恥ずかしそうにAの方を見た。
シオナ「その…Aちゃんと、友達になれたらなって」
A『っ…！！』
一瞬にして、Aから笑顔が消える。
「友達」。
セイカ。
堪えていたのに、涙が溢れそうになる。
A『ご、ごめんけど…私、友達いらないから』
シオナ「…なんで？」
A『友達なんて、裏切られて私が苦しい思いするだけだし…』
シオナ「……似てる」
A『、え？』
シオナは垂れ目を更に下げるように微笑む。
シオナ「私ね、前いた学校で虐/められてたの。引っ込み思案だから、言いたいことも言えなくて。だからこっちに来たんだけど、やっぱり上手くしゃべれないから皆からはぶられて」
A『……』
シオナ「そうだ！」
シオナ「友達ごっこしようよ！」
A『友達、ごっこ…？』
シオナ「うん！別に、いつも一緒にいたりとか、放課後遊んだりとかはしなくていいからさ、お互いひとりにならないようにするの」
A『……私、別にひとりでも』
シオナ「嘘」
A『っ！』
戸惑い意地を張るAを、シオナな光のない目で見た。
シオナ「Aちゃん、今日ずっと辛そうな笑顔してた。見れば分かる。それが作り笑顔だって」
A『……っ』
シオナ「騙されたと思ってさ」
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作者名：ゴンクラ命の荒川白希 | 作成日時：2023年3月26日 10時
