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『理由』 ページ9

別に、何を思ったわけでもなかった。

今回は警察がいつもよりしつこくて、住宅街の入り組んだ道を通ってどこかで羽休めしつつ逃げ方を考えようと思っただけ。

前にも他人のベランダで羽休めした事はあったが(世紀末参照)、俺はその部屋の主に気づかれる特性でもあるのだろうか。

背後から視線を感じて振り向けば、小柄な少女が此方を見つめていた。

相手を安心させるように口元を緩め、相手が騒がないように指を唇へ押し当てる。

少女は察したようで、こくこくと頷いてくれた。

さて……女性に挨拶をするのが紳士というもの。

手すりから降り、コンコンと窓をノックすれば少女は躊躇いもせず窓を開けてくれた。警戒心とかないのかよ。大丈夫かこの子。

「こんばんは、心優しいお嬢さん。」

我ながらクサいなと思う台詞を笑顔で吐く。少女は表情を緩めるでも堅めるでもなく、ごく普通に返答をした。

「噂に聞いていた通りキザなんですね大怪盗さん。」

へぇ、結構ノリがいいんだ。なんてのが第一印象。

「サイレンの音がすると思ったら貴方だったんですね。」

あぁ、このうるささで目が覚めてしまったのか。それはなんか申し訳ない。

軽く謝ると少女は怒った様子もなく寧ろ若干嬉しそうに受け止めてくれた。それからほんの少しだけ会話を交わすと、サイレンの音が近づいてくるのがわかった。向こうもそれに気づいたようで顔を顰めて迷惑そうにしていた。

「おや、気づかれるのも時間の問題……お嬢さん、私はこれで。私と話していたことが気づかれないよう、私はさっさとお暇しましょう。」

オレは1歩下がって軽くバックジャンプし、手すりに立つ。

「あ、あの……」

控えめな大きさの声で呼び止められる。「どうしました?」なんて優しい声で聞き返せば、驚きの一言。

「……また、次の予告日の夜中。お話し相手になってくれますか。」

普段であればそんなお誘い、キッパリと断っていた。何されるかわかんねぇし。

でも彼女の瞳は揺れ、声も震え、拳は固く握られて、若干足も震えていたように見えた。

___そこまでしてオレと話したいのか?

興味が湧いただけだったのだ。それに、なんだか断ったら彼女がこの先笑顔でいられなくなる気がしてならなかった。

だからオレは、その誘いに乗ったのだ。

『密会』→←「似ていて」



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乃花おむ子(プロフ) - 白。さん» ありがとうございます!これからも気が向いた時にちまちま続編というか、後日談の「Secret Lover」更新していきますのでよろしくお願いします!レス返すの遅くなってしまいすみませんでした〜! (2020年2月19日 19時) (レス) id: 6c075283b8 (このIDを非表示/違反報告)
白。 - コナン知ってて、まじ快知ってて、あんスタまで知ってるとは…。作者さんとはお友達になれそうです!偶然見つけた作品なのですが、良いのに当たりました。他の作品も楽しみにしてますね。ささやかに応援します。 (2019年5月7日 20時) (レス) id: 0235a92526 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:乃花おむ子 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Omutarosan1/  
作成日時:2019年4月13日 20時

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