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死んだ人間で遊ぶ、そしてそれが楽しい
頭に浮かぶ生前の優しい優しい兄の姿
思い出す血の匂いとかつての自分の頬を撫でるように漏れた兄の弱々しい息
ぐつぐつと煮え滾るような怒りが込み上げる
「じゃあ、話はこれで終わり」
「湖樹がヘマしなければ捕まえられたかもしれないのに本当に迷惑」
「後はよろしく、そして…ご主人様のところまで連れて行って」
ニコッと笑い手をひらひらと振っては
何事もなかったかのように去ろうとする玻穏
Aはギュッと拳を握りしめ
静かに目を見開きその姿を見ていた
「私のために永遠に走り続けてね」
呪いと思われるものの首に布を巻き付け
まるで犬やトナカイが引っ張るソリのように扱い玻穏は逃げた
じっと見つめていたAは左足だけを前に出ししばらくしてから歩き始めた
その表情は悔しさに歯を噛み締めるわけでもなく、怒りに包まれた顔でもない
ただただ冷静な顔をして目の前の呪いを見ている
「本当に腹が立つ」
「本当に……本当に……頭にくる」
そんな言葉を1人で吐き捨てながら
薙刀を手に取り未だ血が滲む手でぎゅっと強く握りしめる
呪いが拳を振り下ろしてくるが自分より大きなその手をAは片手で受け止め受け流し
そのまま通り過ぎようと横を歩いた
「もう人間じゃない」
「死人で遊ぶなんてふざけてるのにも程がある」
「でも……もし鈴鹿姫が言ったことが本当なら私もふざけてるのかもね」
「一緒にされるの嫌だけど」
Aのこの行動に流石の呪いも動揺した
まさか無視されるとは思ってなかったのだろう
Aはそのままツカツカと歩き呪いに背を向ける
「安心して」
自分の後ろにいる呪いに微笑みかけると
薙刀をクルクルと回したあと
スっとしゃがみ込む
「もう祓ったから」
Aが膝を立ててしゃがみ込んだ瞬間
体がバラバラに切り刻まれた呪い
素通りされたんじゃない、いつの間にか攻撃されその攻撃で死ぬとAに確信されていた。
「こんなに沢山呪いを1箇所にぶち込むとか…」
刃に付着した血をとるために
薙刀を1回横に大きく振り血を飛ばす
「今日今この場で逃がして殺せなくても」
「いつか絶対お前を殺す」
「殺せるような気持ちを作ってやる」

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まー(プロフ) - 亜紀さん» コメントありがとうございます…!尊敬だなんて恐れ多いです…これからも頑張ります:-) (11月29日 16時) (レス) id: 47d5979f19 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます…!私も小説を書いているのですが、ほんとに尊敬してます!更新頑張ってください! (11月28日 13時) (レス) id: ab4f96d557 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まー | 作成日時:2020年11月24日 19時