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「(クソっ、油断していた)」
「(この女がこれ程力を持ってるとは知らなかったし完璧に甘く見ていた)」
虚ろな目をしながらカツカツとブーツの音を鳴らし歩き窓ガラスが割れた店の中に入る
そして男の上に跨ると男の顔の横に薙刀を突き刺した。
「邪魔するやつは殺す、ただそれだけ」
「本来人を守るために使うべき呪術をお前たちは一般人を殺すために使った」
「こうなっても文句は言えない…!!」
さっきまで怖い顔をして虚ろな目をして
この世に存在する全てを殺してしまいそうだったAは何故か急にここまで来て
ほんの少しだけ我を取り戻し始めた
薙刀を握る手が震え、唇を血が出るまで強く噛んでいる。
まるで何かを強く我慢するように。
「殺す前に教えて」
「あのフードを被った男は誰?」
「そして……なんで貴方たちは罪のない人々を殺して回るの?」
いちいち気にしていたらキリがない
頭ではそう理解していても心が受け入れてくれない
自分のせいで、自分が早めの対処ができなかったせいで沢山の人たちを恐怖に陥れ
傷つけ、血を流させてしまった
その責任を感じきっとAは心を痛めたのだろう
同じ人間である呪詛師を殺す覚悟はあってもそこだけは違う。
「今日
「………知りたいか?あの男の正体」
果たしてこの目の前の男は
絶対的な"悪"なのだろうか──。
それさえも急にわからなくなった
あとフードを目深に被った男のことを思い出すと気分が悪くなり
今まで揺らがなかったものが揺らぎかける。
「俺が言うのもあれだけどとんだクソ野郎だ」
「お前…アイツを知っているのか?だから泣きそうな顔をするのか?」
「俺は別にアイツのことはどうだっていいからな、それくらい教えたって死にはしねぇ」
急激に怒りがまるで水をかけられ消滅した火のように消えてしまった
何故なのかその理由が自分でもわからないまま。
「俺はただ必要とされたかっただけだ」
「見捨てられてた俺を拾ったのがやつらで、そこが偶然俺の居場所になった」
「俺は…自分を見てくれて必要としてくれる居場所がほしいだけ」
自分と同じように苦しんでいるのは
呪詛師の方にもいるのだろうかという
妙に冷めた気持ち。

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まー(プロフ) - 亜紀さん» コメントありがとうございます…!尊敬だなんて恐れ多いです…これからも頑張ります:-) (11月29日 16時) (レス) id: 47d5979f19 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます…!私も小説を書いているのですが、ほんとに尊敬してます!更新頑張ってください! (11月28日 13時) (レス) id: ab4f96d557 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まー | 作成日時:2020年11月24日 19時