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「狗巻くん」
「ここは私が相手をするから狗巻くんはここにいる人たちを逃がして欲しい」
あの制服を着た男は間違いなく
フードを目深に被っていた男と一緒にいた人間の男だ
左手で持った刀に右手を添えてはAだけを見つめうっすらと笑みを浮かべている。
「おかか」
「正直不安だけど…でも何とかする」
「それに私より狗巻くんの方がたくさんの人を助けることが出来る力を持ってるはずだから」
このショッピングモールは広い
そしてここに足を運んできた客の数も多い
できるだけ多くの人をここから逃がすにはAの力よりも狗巻の力の方が役に立つ
それに敵の狙いは他の誰でもないAだ
ここから下手に動けば攻撃されて関係の無い人まで巻き込む可能性がある。
「狗巻くんの呪言があればたくさんの人を助けられる」
「だからお願い、私は平気」
相手がどの程度の者かわからない今
Aを置いていくのもそれなりに危険がある
もしも相手が特級だったら─
Aの言いたいことも分かるがそんなにすぐには頷けない。
「もう自分のせいで人が死ぬのを見たくない」
「少しでも助けたい」
でも必死に訴えかけるようなAの目を見てしまったら頷かないわけにはいかなかった
さっきとは違う今にも泣き出しそうな目
自分じゃどうしようもないから無意識に人の力に縋ってしまう
そんな自分が大嫌いで仕方がない。
「高菜」
「うん、大丈夫お願い」
「しゃけ」
ちょっとくらい誰かの優しさや力に縋っても
バチは当たらない
Aの気持ちが伝わったのか狗巻は頷きこの建物全体に呪言が響くようにと
放送機器が使える場所まで走っていった。
「弱いから逃がしたのか?」
「馬鹿じゃないの、逆だよ」
「彼は強いから私なんかよりたくさんの人を助けられる、だからここを離れてもらったの」
何とかするといっても何をする?
そんな気持ちがほんの少し広がる
だがあの時のような焦りは一切なかった。
その理由は……1人じゃないからだ
離れていても一緒に戦っている誰かがいる、これだけで大分気持ちが違う。
「呪術師舐めんな、ボコボコにしてやる」
「他のやつは舐めるが……お前は違うな」

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まー(プロフ) - 亜紀さん» コメントありがとうございます…!尊敬だなんて恐れ多いです…これからも頑張ります:-) (11月29日 16時) (レス) id: 47d5979f19 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます…!私も小説を書いているのですが、ほんとに尊敬してます!更新頑張ってください! (11月28日 13時) (レス) id: ab4f96d557 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まー | 作成日時:2020年11月24日 19時