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「お話しようって言っても…」
「私の話ばっかりになってつまらないよね」
自分のことなんか気にせずに食べればいいのに
頑なに食べようとしない
それどころか話をすると自分のことばかりになることを気にしている
人の目なんて気にしない生き方を─
そう言っているのにも関わらず皮肉なことにAは人の目を気にしている。
「おかか」
「………いいの?」
「しゃけ」
頬杖をついてAの話を待っていたのに
Aが気遣って話をするのをやめようとしたから焦って狗巻は止めに入った
彼にとってはそれでもいいのだ
Aの思っていることが聞かなくてもわかるから。
「ありがとう」
「私…前の学校ではあまり話す人いなかったから」
「自分が悪いんだけどね、自分で人との関わりを避けてたから」
「今でも…ちょっと怖いんだでもみんなと一緒にいたい」
矛盾する気持ちをその小さな体に抱いて
誰にも、どこにも吐き出すことなく
1人で苦しんでいる
自分はどうしたらいいのか決めてるように思えてまだフラフラとさ迷って。
「友達がいるとこんなに違うんだね」
「どうしようもなく辛いってわかっているのに求めてしまうのが人間だから」
「昔から1人は退屈だと思ってた」
友達を作れば作るほど
人との関わりを持てば持つほど
後に自分の首を絞める凶器となることを
Aはまだ年端もいかないころから知っている
突きつけられ受け止めざるを得なかった。
「私ね、これでも兄貴が死ぬまではちゃんと人と関わりを持ってた」
「ほら…駅のホームで話してた小さい時の話」
「その子と私はきっと友達と言ってもいい関係だったと思うんだ」
辛い想いをするのなら最初からいらない
だけど1人いるのは心細い
誰かを失って悲しみに暮れる日々も終わりが見えなくて辛いが
その思いを誰にも言えないことも同じくらい辛い
誰かに縋りたくなってしまう。
Aは悲しみを抱えたまま嘘をついて取り繕うのは得意だが…取り繕いすぎて疲れて壊れた。
「楽しかったんだと思う、何も知らなかったから」
「自分は人知れず誰かの犠牲の上で守られて…なんの苦労もせずに生きてたから」
「だから今の状況は…それの罰があたったんだ」

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まー(プロフ) - 亜紀さん» コメントありがとうございます…!尊敬だなんて恐れ多いです…これからも頑張ります:-) (11月29日 16時) (レス) id: 47d5979f19 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます…!私も小説を書いているのですが、ほんとに尊敬してます!更新頑張ってください! (11月28日 13時) (レス) id: ab4f96d557 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まー | 作成日時:2020年11月24日 19時