私の方がモテるけど【青葉城西】 (ページ34)

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29 握り拳ページ34

岩泉side

佳奈子たちの言葉で、ハッと我に返る。

「わ、わりぃ。松川が言った通り、
疲れてんのかもしれねぇな」

咄嗟に笑顔を作ったが、
ははっ、と乾いた笑い声しか出てこなかった。

『きっとそうだよ！今日はたくさん練習したし、
みんなもほら、早くご飯食べよっ！ね！
(もう、気をつけてよ～？)』

「そうだな。冷めちまう前に食おうぜ。
(悪かったって！つい、な……………)」

こんなとき、脳内会議が出来て
本当に良かったと思う。

(でも……………)

他校にまで迷惑をかけたくないっていう
佳奈子の考えは分かる。

でも、だからって、仲間のことを悪く言われて
黙ってられるほど、俺は賢くも冷静でも無い。

ﾁﾗｯ……

こっそり萌絵の方を見ると、
まるで何も無かったみたいに
及川と喋っていやがる。

「クソッ……………」

本当は一発殴るくらいしたいのに
それが出来ないもどかしさに、拳を強く握る。

『…………はじめ』

ﾋﾞｸｯ!

急に名前を呼ばれて驚きながら振り返ると、
いつものように優しく微笑んだ佳奈子が
その白い手で俺の手を包んでいた。

『ありがとね、怒ってくれて。
本当は嬉しかった』

「っ……………」

不意打ちでそんなことを言われて、
顔に熱が集まるのが分かる。

花「あれ～？岩泉くん照れてるんですか～？
照れ泉くんなんですか～？」

松「リア充爆発しろ～！」

及「ああ～！岩ちゃん抜け駆け～？
ず～る～い～!!俺も佳奈子ちゃんと手繋ぐ～!!」

岩「お、お前ら、うるっせぇ!!」

佳奈子と繋いでいない方の手で及川をぶん殴る。

及「なんで俺だけ?!理不尽!!」

『ｸｽｸｽｯ…………』

こうやっていつもの会話をして
佳奈子の笑顔を見ていると、さっきまでの
イライラがスゥ…と消えていく。

「カレー、美味いな」

そう誤魔化すように笑って、佳奈子の
小さくて華奢な手を握り返したのは、
俺だけの秘密だ。