おにぎり宮の店主さんに一目惚れした【宮治】 (ページ6)

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『っしゃー！終わった！』

だいぶ残業したけど、会社を出れば同じような社会人がちらほら。

まだまだ夜はこれからって感じの街中。

居酒屋やファミレスが建ち並ぶ大通りを突き進み
目指すはもちろん＿＿＿

『着いた！おに宮！』

お昼がダメなら夜行けばいいじゃん、と仕事中気づいた私。

夜に宮さんが居るのかは分からないけど
お腹空いたしおにぎり食べたいし会えたらいいな、くらいの気持ちで来た。

『こんばんは！』

｢…わっ、びびったぁ｣

いつもの如く元気よく扉を開けたら
カウンター席に座っていたセンター分けの男性が
細い目を見開きながらこちらを振り向いた。

なんかあれみたい。あの、今日ネットニュースで見た
チベ…チベットスナギツネ！

『あ、驚かせちゃってすみません』

｢いえ｣

なんてチベスナ似の彼と会話をしながら1つ席を空けて隣に座った。なんとなく。

…やっぱり宮さんは居な『あ！宮さんこんばんは！』居た。

嬉しくて思わずテーブルから身乗り出しちゃったよ。

何だか慌てたようにひょこっと事務所であろう扉の中から顔を出した宮さん。お口ぱんぱんにご飯を詰め込んでてめっちゃ可愛いです。好きです。

｢あ。……どうも｣

何故かほっと胸を撫で下ろしていて
なんか強盗とかじゃなくて良かった的なアレに見えた。

『休憩中ですか？お疲れ様です！帽子被ってない所初めて見ましたかっこいいですね！好きです！』

｢はあ。さよか｣

『ゆっくり休んでください』

会えた事は嬉しいけど、休憩のお邪魔はしたくないので表情筋ゆるゆるのまま手を振った。

そしたらぺこっと頭を下げて事務所の中に消えていった。

｢うわ…珍し｣

『なにがですか？』

ボソッと呟いたチベスナさんに思わず話しかけたら
彼は少し考えた後、内緒話でもするみたいに続けた。

｢おさ、……あーっと…ここの店長って、飯中は絶対席立たないし話も殆どしないんっすよ｣

『それほど私の登場の仕方が強盗とか不審者みたいだったんじゃないですか？
ほら、私だって分かった途端“なんだコイツか…”みたいな顔してたし』

静まり返る店内。

チベスナさんからの視線を感じながら
バイトさんに、おにぎりを注文する私の声だけが響いた。