another あの日の侑の心情 ページ43
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本当は、この手で
めいいっぱい抱き締めてやりたい。
せやけど、それは俺の役目やない…よな
Aの気持ちも、サムの気持ちもよう分かっとるから
もう、奪おうなんて思わへん。
今は、好きな人が自分のもんになってほしいっちゅうより
幸せんなってほしいって、心の底から思う。
今までまともに誰かを好きになった事なんて無かった。
20代ももう数年で半ばやっちゅうのに、今更気づきよった。
恥ずいけど、きっと、この人が
俺が初めてちゃんと好きになった人。
初恋は実らへんってよう言うもんな。
やけど、初めて本気で好きになれた女性がAで良かった。
もし、万が一、億が一、Aのサムへの気持ちが無くなるんやったら
その時は全力で落としにいく。
でもそんな事この先、無い。無いって理解しとるから言えんねんな。
なあ、A
俺と治、出会う順番が逆でも
きっとお前は、あいつを選んだんやろな。
近い未来、くっつくであろう2人を
本当に祝福したいと思うてんねんで？それはほんまやで。
けどな、
けど、
俺の気持ちに蓋をする前に、
｢なあ、A｣
まだ誰のもんでもない、
サムのもんやない間だけは
少しだけ、抗ってもええか？
｢この後暇？買い物付き合うてや｣
分かっとる。分かっとんねん。俺じゃ無理な事くらい。
『ス〇バ寄っていいなら行く、新作飲みたい』
｢おーええよええよ、奢ったる｣
せやけど、Aがまだ独り身の今だけ
ちょっとくらいAのこと独り占めしても
罰当たらへんよな？
いつか簡単に触れられなくなる距離に行ってしまう彼女を
少し、強く引き寄せた。
｢A｣
『ん？』
｢人好きんなるって、しんどいな｣
『…そうだね』
Aと2人で居られた時間は
全部 全部
俺だけの、宝物。
侑の心情＿＿＿Fin
cf. 37個
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作者名：OX | 作成日時：2021年8月27日 8時
