おにぎり宮の店主さんに一目惚れした【宮治】 (ページ40)

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それから更に1ヶ月が経った

治くんに会う事がなくなった毎日は心にぽっかり穴が空いたようで
ただ、何となく時間が経過するのを待つ日々

朝は、少しでも時間短縮したい。

おに宮の前を通るのが会社までの最短ルートだから
出勤がお店の営業時間前で良かった、なんて。

いつもとだいたい同じ時間に出勤し、パソコンで勤怠を記録

先に同僚が出勤していて、始業時間までまだ
時間があるのでコーヒー飲みながら雑談

程なくして社員が全員出勤し、朝礼が始まる

うん、いつも通り。何も変わらない。

だけど今日の支社長の話は、いつもとは違うものだった

｢…すまんけど、今日でうちの会社、倒産する事になった｣

驚く時間も悲しむ暇もなかった

その後は、会社全体の備品や自分のデスクの片付けをして
弁護士さんが来て今後の事について淡々と話していた。

退職金とか、失業手当とか、色々説明され
気がつけば最後の終業時間を迎えていた

そして、両手いっぱいの荷物を抱え一旦帰宅し
仲良しの同僚達とファミレスでこれからどうするのか
答えのでない話を延々と、夜中までした。

からっぽの心と、からっぽの1日。

『詰んだ』

なんか笑えてきた

明日アパート引き払って、東京戻ろうか。

帰る家なんてないけど。東京で家と職探そう

ゆったり夜道を歩いた。

今日くらい、最後くらいまた治くんのお店の前通って帰ろう

街灯の数も少し汚れたコンクリートの道も、もう見慣れた

ずっとマナーモードだった携帯が振動する。着信だ

『侑、こんな夜中に女の子に電話なんて嫌われるよ』

｢なんや元気そ…でもないな｣

『元気だし』

｢無理せんでええ。すまん、人づてで聞いてしもたんやけど
お前んとこの会社倒産したんやろ｣

『情報網こわ』

｢なめんな俺を｣

侑と通話しながら歩いていたら、いつの間にかおに宮の前を
通り過ぎるところだった

『これからの事は不安だけど
まあ別に今までの仕事にそんなに固執してなかったから割と平気』

｢ほんならええけど…｣

今しがた通り過ぎたおに宮へ振り向き数秒見つめ
また前を向いて歩き出した

『…明日、東京戻る』

｢そら急やなぁ｣

『だから、治くんによろ｢誰になんやって？｣…し、く』

｢おっ、サムに会うたんか。なら心配いらんな〜ほな〜｣

『ちょ、侑くーん？』

話中音が、夜道に響いた。